Close RECOMMEND

先進事例に学ぶ広告コミュニケーションのいま

「ドリーム・クレージー」キャンペーン広告動画より

2018年から2019年にかけて、全米を賛否両論の渦に巻き込んだ広告コミュニケーションがある。

ナイキが、同社のスローガンである「Just do it」導入30周年を記念して行った「ドリーム・クレージー」キャンペーンだ。このドリーム・クレージーは、カンヌライオンズ2019においてアウトドア部門グランプリ他を受賞し、高い評価を得た。

ドリーム・クレージーは、多くのスポーツ選手を起用。制作されたコンテンツも多岐にわたるのだが、キャンペーンの顔として起用されたのは、アメリカンフットボールの元スーパースターであるコリン・キャパニックだ。


「Nike - Dream Crazy (case study) Cannes Lions 2019 Grand Prix Outdoor + Entertainment For Sport」

この事例は政治問題ではない


キャパニック選手は、2016年プレシーズンマッチの試合前、国歌斉唱の際に、人種差別に抗議して膝をついたまま立ち上がらず、起立を拒否。世論を二分する論争を巻き起こした。これを契機に、所属していたフォーティーナイナーズとの契約を終了して以降、2年間プレーをしていなかった。

このキャパニック選手の起用をめぐっては、当初、反対派が自分のナイキのシューズを燃やしたり、トランプ大統領もツイッターでナイキ批判をしたりして、ナイキの株価は3%下がった。しかし、何人かの著名人が、テレビなどでナイキの姿勢を応援し始め、徐々に売り上げも回復、ついには過去最高の株価を記録するに至った。

この事例は、「ナイキが政治問題に手を出した」という文脈で語られがちだ。しかし、私からすると、ナイキはリスクを冒してまでも、自分たちのメッセージを最も効果的に伝えるための「最適な媒介」としてキャパニック選手を選んだのだと思う。

その伝えたかったメッセージとは、Just do itという形で示され続けて来た「困難に負けずに、(信じることを)やろう!」ということだろう。

ドリーム・クレージーでは、そのメッセージをコピー化した「Believe in something, even if it means sacrificing everything(何かを信じよう! たとえ、そのことですべてを失うことになったとしても)」を表現するのに、キャパニック以上の存在はなかったと考えるのが正解に近いのではないだろうか。

文=佐藤達郎

この著者の記事一覧へ

PICK UP

あなたにおすすめ