そのメッセージを伝えるのに「最適な媒介」は?
さて、この事例から、われわれが学び得るものは何だろうか?
それは、誰かとコミュニケーションを取ろうとする場合に、「最適な媒介」を一生懸命に探してみるということだ。
われわれは相手に何をメッセージするかについては、思いをめぐらしたり、時に「語りかけ方」を工夫したりすることはあっても、「媒介」を探してみることはほとんどしない。でも、実は適切な媒介を探すことができれば、メッセージは強力に伝わっていくのだ。
若い部下が何度語りかけてもこちらの意図を理解してくれない場合、彼が兄貴分として慕っている中堅に頼んでみるのは、有効かもしれない。あるいは逆に、上司に方針を変えてほしい場合、自分が直接アピールしても埒が明かない場合は、その上司の同期の人間を介したほうがうまくいくかもしれない。
子供たちとコミュニケーションを取ろうとする場合も、息子の好きなものが最近のミュージシャンであれば、そのミュージシャンの楽曲を経由することで何かが伝えられるかもしれない。娘の好きなものがネット上のゲームであれば、そのゲームの記事を読んでみて、ゲームの内容に擬えてメッセージを伝える努力をしてみるのもよいだろう。
もちろん、ナイキが炎上のリスクを冒してまで挑戦したように、媒介を使うにはこちらにもそれなりの覚悟や努力が必要だ。仕事で言えば、広範な人間関係を築く必要があるだろうし、家庭で言えば、イマドキのカルチャーを積極的に学習しなければいけない。
とにかく、直接的な語りかけがあまり上手く機能していない場合には、この媒介を使う方法を試してみる価値はあるのではないだろうか。
連載:先進事例に学ぶ広告コミュニケーションのいま
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