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クリエイティブなライフスタイルの「種」

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「ターゲティングされた広告には飽き飽きだ」「自分と近しい情報もいいけど、まったく新しい世界観と出会いたい」。SNSがインフラ化した昨今、情報の蛸壺化に危機を覚え始めているビジネスパーソンは多いでしょう。また分析ツールや技術も高度化し、鋭いマーケティングを元に生み出された企画やプロダクトが増える反面、既視感のある、平板で退屈なものが増えているようにも思えます。

もっとクリエイティブな思考を持ち、自由で斬新な発想でビジネスやプロジェクトを生み出すにはどうすれば良いか? その手段として今注目を集めているのが「編集視点」。新しい文化やムーブメントを作り続けてきた編集者の視点を、ビジネスシーンで応用すればイノベーションを起こせるのではないか、という見立てです。

今回はそんな「編集視点」にフォーカスした著書「ビジネスの課題は編集視点で見てみよう」(マイナビ出版)を上梓したRIDE MEDIA&DESIGN代表取締役社長の酒井新悟氏に、その極意についてきいてきました。


──まずはじめに「編集視点」について教えてください。

編集者というと「雑誌や書籍をつくる人」というイメージを持たれがちですが、実はマーケティング、マネジメント、コミュニケーション、提案、企画、文章などと職域がとても広く、ビジネスマンの必須スキルを満遍なく発揮しなければならない仕事です。

通常の企業であれば、マーケティング部門、プロダクション部門というように各分野において専門的な仕事を行いますが、編集者はそれらのビジネスプロセスを一人完結で行うため、ある事柄について大枠から細部までを考えられる能力が身につきます。この能力をビジネスシーンに応用して、パフォーマンスを上げるのが「編集視点」です。

──具体的にどのようなビジネスで利用が可能ですか?

例えば数値を分析して、それを元にコンテンツやプロダクトを作り出すのは比較的容易です。しかしながら、いま市場にない「ニーズをつくり出す」となると途端に難易度が上がります。そこで編集視点の出番です。編集者は、市場リサーチやアンケートに基づいた定量的な情報だけでなく、 人間の行動や心理を読み解き、さまざまな可能性を見出し、それを結合させて一つのアウトプットを行います。



以前、「ママ向けの新メディア」の立ち上げを行いました。 それにあたり、出生率、教育環境、家族構成など を調査した結果、新規参入は難しいという結論に至りました。しかし、もう少し注意深くママたちのインサイト、周辺のカルチャーなどを探っていくと、意外な事実が見えてきました。

それは、90年にブームを巻き起こしたギャル世代が、歳を重ねてママになり始めていたということです。そこから、ギャルがあそこまでのムーブメントになったのだから、ギャルママのカルチャーも絶対に醸成されるだろう、という仮説が生まれました。

社会背景的にも、女性の社会進出が進み、子育てしながらもお洒落を楽しむというような価値観が一般的に浸透しつつありました。さらにその伏線としてファストファッションの流行も重なり、ママたちが安価にお洒落を楽しめる状況も整っていました。

そのようなマーケットリサーチからは見えてこなかった複数の要素を結合させてアウトプットしたのが、ギャルママ雑誌でした。結果は予想以上の反響となり、一気にムーブメントになりました。編集視点ならでは視野の広さ、そしてそれらを結合して新たな意味付けをすることで、潜在的なニーズを掘り起こすことができたのです。

文=国府田 淳 イラスト=児玉潤一

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