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2020.10.04 16:00

注目の歴史学者ルトガー・ブレグマンが提唱する、実は「優しい人類」史

ルトガー・ブレグマン(Simone Padovani/Awakening / by Getty Images)


この本は、パンデミックが始まるかなり前に執筆されたものだが、「危機の時こそ、人々の本質が現れる」として、戦時中や人類史上の多岐にわたる実例を紹介。人類はそもそも思いやりや協力の力で生存競争を生き延びて進化した生物であり、人類が本質的に自己中心的で暴力的だとする悲観的な見方は非合理的だと指摘する。
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そのひとつが無人島で遭難した少年たちの物語だ。ブレグマンは当時の記録などを手がかりに1965年に起きたオーストラリアの遭難事故の被害者と救出者を探し出し、少年6人が無人島で1年以上暮らした話を聞いた。SFの世界では残酷性や狡猾さの舞台になりそうな極限の状況でも、少年たちの関係は協力と思いやりに満ちたものだったという。

また、スタンフォード大学の模擬刑務所の実験など「人間の本質的な残虐性」を示すとされる、数多くの実験や事件についても丹念に資料を読み解き、実験方法の問題点や意外な真相を発掘。従来の見方を根本的に覆す。

人類史を見れば、ナチス・ドイツのような悲劇が起き、残酷な独裁者や富裕層が権力を握り、格差と不平等が固定化されるような社会システムが作られてきた。しかし、そのような問題の多くは「他者は自己中心的で信じられない」という誤った人間観が起こしたものだという。もし「多くの人々は(少なくとも仲間には)まともで優しい」と信じられるようになれば、世界は変えられるとブレグマンは言う。彼が提案する生きるための指針の一部を紹介しよう。
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「ベストを想定せよ(疑念があっても人をまず信じてみる。多くの人はいい人で、たまに騙されても小さな犠牲だと考える)」「同情心ではなく思いやりを鍛えよ」「ニュースを避けよ(ニュースになるのは極端な事例。より深い読み物やオフラインの時間も大切にする)」「他者が他者を愛するように自分を愛せよ」「冷笑主義に陥らない」「恥ずかしがらずにいいことをせよ(いいことは堂々とやり、隠さない)」「現実的になれ(不必要に悲観的になる必要はない)」


ルトガー・ブレグマン著『Humankind: A Hopeful History』。ユヴァル・ノア・ハラリも高く評価。日本語版は文藝春秋から出版予定。


ルトガー・ブレグマン◎1988年生まれ。歴史学者、オランダのメディア「デ・コレスポンデント」のジャーナリスト。著書に『隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』(文藝春秋刊)など。

文=成相通子

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