妖怪戦争だった総裁選挙
自由民主党の総裁選挙は、現世で展開された妖怪戦争の観がありました。候補者たちは、皆さん、それだけで凡人ではないし、繰り出す技も、妖怪同士の戦みたいでした。その陰に隠れてしまった野党の離合集散劇も妖怪チックではありましたが、やはりスケール感と注目度で与党の皆さんの方が何枚も上だった。
政策もさることながら、イメージ作りから選挙の方法、本音を晒しているようで、もう一つ深い本音があるといった高等戦術が見ごたえありました。選挙人や世の中をいかに「化かす」か、がポイントになります。多くの人々は野党にはもう化かされない。この点で昨今の野党は妖怪戦争の参加者資格を失っていました。
世間は、「化かされたい」という潜在意識を持っています。現実が理想と異なることなど、とうに知ってはいるが、せめて一夜の夢を見たい。だから、上手に化かした方が勝ちです。
でも、世の中は同時に「化けの皮が剝がれる」ことも虎視眈々と狙う。妖怪警備団の最たるものがマスコミですから、初めは妖怪の化け技を誉めていても、3カ月もすると剥がしにかかる。よって、偉大な妖怪政治家は妖術が解けないように、現実の政策を着実に実現していかなければならないのです。そういう意味でも、8年近い長期政権を維持してきた安倍晋三氏は、大した妖怪だったと感心しています。
古来、大人物は妖怪だった?
このように、大物の政治家や企業経営者はまるで妖怪です。歴史上の大物君主や大宰相、大実業家にもそう言われた人々は少なくありません。不気味で常人ならざる能力、いや、妖力を持っているかのようです。
こうした妖怪人には、典型的には2つのタイプがあります。1つは、幼いころから貧しく、大苦労の繰り返しの中、並外れた努力と生来の高い能力(特に人たらしと言われる才能)で自らの道を切り開き、斯界のトップに上り詰めるパターン。田中角栄さんのような人です。もう一つは、並外れた頭脳の持ち主で、育った環境も申し分ない。東大をトップで卒業、外国語もペラペラ、挫折というほどの挫折も経験しない。生まれついての超エリートです。岸信介さんなどでしょうか。