ニューヨークでは、東京の感染対策に比べてはるかに厳しい。9月上旬時点で、レストラン・バーでは屋内での飲食はできず、屋外のテラス席、テイクアウト、デリバリーのみである。医療関係者や高齢者介護施設では、PCR検査を定期的(週2回)に受けなくてはいけない。9月から秋学期が始まるコロンビア大学でも、完全オンライン授業だけの教授や学生以外で、キャンパスに戻る学生・教職員は全員PCR検査を受けなくてはならない。そもそも一般市民でも、PCR検査を受けておきたい人は、近所の検査センターで、簡単に、無料で、検査を受けることができる。クオモ・ニューヨーク州知事がはっきりと、検査の拡充が感染拡大の芽を摘むためには最重要だ、として、積極的に検査の拡充を図ってきた。
(人口当たりの)PCR検査の数では、主要先進国に比べて、日本が極端に少ないことが知られている。今年3月から5月にかけての第1波時には、PCR検査を受けられる条件は厳しく、発熱(37.5度以上)が続き、かつ渡航歴があるか感染者に濃厚接触した場合に限られた。発熱があるのに、症状がなく、濃厚接触がないために、PCR検査を受けられない(保健所が検査に誘導しない)人が続出した。その後、保健所の検査の基準は若干緩和されたが、現在でも、発熱だけでは、PCR検査を受けられない。
第1波時には、入院ベッド数が足りなかったこともあり、陽性者が続出すると医療崩壊につながるため検査を絞ったともいわれている。検査で陽性になると、無症状や軽症でも、法律に基づいて強制入院するとされていたからだ。その後、同法律の運用は改められ、軽症者はホテルまたは自宅で自己隔離をすることが可能になり、問題の大部分は解決したはずだ。
その後も、PCR検査が拡充されない理由はいくつか挙げられている。第一にPCR検査では、鼻から綿棒を差し込んで検体を採取するが、この検体採取ができる資格者が少ない、またこのときにくしゃみなどが出て飛沫感染が起きることが懸念される、というものだ。第二に、検体を採取しても、検査機器にかけて結果を判定する技師が少ないというものだ。第三に、陽性者が見つかると、その人の2週間の行動の聞き取りを行って濃厚接触者を特定して、濃厚接触者に通知しなくてはならない。また、陽性者を入院させるのか、ホテル収容にするのか、自宅で経過観察にするのかを「調整」しなくてはならず、保健所のキャパシティに限界がある。最後に、PCR検査も完璧ではなく偽陽性や偽陰性があるというものだ。