スウェーデンの新型コロナPCR検査事情。キットは「タクシーが配達」

2020年8月、スウェーデンのストックホルムで、3月の休校以来、初めて学校に行く学生たち(Getty Images)


Bank IDでカルテの閲覧も


このBank IDやmobile Bank IDによる本人認証で、自分のカルテを閲覧することもできる。また、各種医療サービスの予約なども行える。スウェーデンの医療は、日本でいうところの都道府県レベルの地方自治体の管轄であるが、各疾患についての医療情報、医療機関の情報が地方自治体の運営するホームページ(1177)から収集できるだけでなく、医療機関受診予約や医療相談といった医療サービスへのアクセスもホームページからBank IDでログインすることで可能である。またホームページ上の情報は、数十の異なる言語、手話、音声でも提供されており、社会的弱者に対する配慮が行き届いている。

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検査キットの袋に貼ってある紙

スウェーデンでは、PCR検査の適応は感染のピークにおいては、入院が必要な有症状者のみが原則であり、それ以外の有症状者は検査をせず自宅待機であった。感染がピークを過ぎ、PCR検査のキャパシティーが増大したことを受け、症状がある人は全員、無料でPCR検査が受けられるようになった。当初は医療機関で行っていたが、症状がある時に医療機関を受診することは適当とは言えないため、ストックホルムでは、ドライブスルーで検査を受けるか、自宅で自己検査をするかのいずれかが選択できる。

もちろん、入院の必要がある重症者は医療機関を受診する。パンデミック発生以降、医師の診断書なしに3週間までは休業補償付きで休むことができるようになった。

Bank IDを用いて1177にログイン、検査予約。ストックホルムではタクシーでキットを配達


自宅で検査する場合は、前述の1177からBank IDを用いてログインし、検査を予約する。予約をすると、検査キットが地方自治体が契約するタクシーにより届けられるが、配達日にsms(ショートメール)で連絡があり、玄関前まで届けられる。各検査キットにはQRコードが付いており、Bank IDで本人認証し、QRコードをスキャンすることで、パーソナルナンバーと届けられた検査キットが紐付けされる。

検体を採取したら冷蔵庫に保管し、回収の連絡があったら検体を玄関前に置き、担当者が本人に会うことなく回収する。検査結果が出たらsmsが届くので、1177からログインし、検査結果を確認する。検査から3日空いていれば、再検査を受けることもできる。

子供の「欠席期間を短くする」配慮


8月31日に公衆衛生庁は、子供の新型コロナウイルスPCR検査についての新しい指針を発表した。小学生から高校生は大人と同様、症状があればPCR検査が推奨される。以前は、少しでも症状があれば学校を欠席させることになっていた。PCR検査の目的は、陰性であれば、軽い症状が残っていても早期に登校を可能とし、子供たちが欠席する期間をなるべく短くすることで、子供たちの精神衛生に与える影響を最低限とするための配慮である。

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2020年8月、スウェーデンの高等学校の様子(Getty Images)

つまり、隔離するための検査ではなく、社会復帰をさせるための検査である。検査をしない場合は、症状が無くなってから2日は欠席するか、症状が出現してから7日は欠席することが推奨されている。
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文=宮川絢子 編集=石井節子

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