スウェーデンの新型コロナPCR検査事情。キットは「タクシーが配達」

2020年8月、スウェーデンのストックホルムで、3月の休校以来、初めて学校に行く学生たち(Getty Images)


スウェーデンにおいては、学校で感染したり、クラスターが発生するリスクは低いとされている。既に気温が下がり、通常の感冒のシーズンが始まっているスウェーデンでは、不要な欠席を子供達が強いられるリスクを「PCR検査で陰性」で減らすことができる意義は大きいといえよう。

子供の検査に関しては、13歳未満であれば、親のBank IDを用いて検査が可能である。13歳以上であれば、子供自身のBank IDを取得できる。

第35週、陽性率は前週の2.7%から低下


第35週のPCR検査件数は8万5060件で、陽性率は1.6%であった。前週よりも2万件多い検査件数にもかかわらず、陽性率は前週の2.7%から低下した。中国、武漢の会社、BGI Biotechnology の検査キットによる偽陽性3900例が統計より削除された。

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週別のPCR検査数

陽性者は主に20歳代から40歳代の若年層に多い(図1)。

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図1

子供については16歳以上の高校生に多い(図2)。

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図2

重症者、死亡者の増加も見られておらず、死亡者ゼロの日も複数ある(図3)。

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図3

感染の収束が継続していることを受けて、公衆衛生庁は、今まで50名以上の集会を禁止していたが、これを10月より500人以上とし、規制の緩和を開始した。

しかしながら、公衆衛生庁は、今後、感染再拡大が起こる可能性を考えて、向こう一年間に起こりうる3つの考えられるべきシナリオを示した。シナリオ0は今までと同様、感染が低いレベルで継続する。シナリオ1は時々小さなピークが訪れる。シナリオ2は少しずつ感染が拡大するというものである。

そして、マスクの使用については、ソーシャル・ディスタンスに勝るエビデンスはないことを改めて強調するとともに、マスクの使用を推奨すれば、医療現場や介護現場でのマスクが不足する危険もあるとの見解を示した。しかしながら、今後、状況によっては公共輸送機関内など特別な環境でマスクの着用を推奨する可能性もあるとした。

なお、15歳未満の子供にはマスク着用を推奨しない。パンデミック発生時から現在に至るまで、スウェーデンではマスクを着けている人はほとんどいない。医療機関の医療従事者も、限られた業務以外ではマスクを着用していない。

また下図の通り入院患者数も減少の一途を辿り、ICU治療が必要な患者もごくわずかである。




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宮川絢子(みやかわあやこ)◎スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務。平成元年慶應義塾大学医学部卒業。日本泌尿器科学会専門医、スウェーデン泌尿器科専門医、医学博士、カロリンスカ大学およびケンブリッジ大学でポスドク。2007年スウェーデン移住。スウェーデン人の夫との間に男女の双子がいる。

文=宮川絢子 編集=石井節子

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