人を幸せにするケーキは、記念日や、ちょっとしたおもたせ、シンプルに美味しいものを食べたい時など、さまざまなシーンで魅力を発揮する。そのポテンシャルを仕組み化したCake.jpの無二のサービスは、街のケーキ屋さんや洋菓子店、そしてパティシエさんという作り手と、消費者を結ぶケーキのプラットフォームだ。
CEOの高橋優貴が「ケーキと消費者のマッチングサービス」と表現するこのECが面白いのは、特化することに加え、登場人物であるケーキ・洋菓子店と消費者、それぞれの課題を同時に解決している点にある。
深堀りする前にまずケーキ・洋菓子店の現状を見ておこう。
ケーキ・洋菓子の販売は、スイーツ人気を背景に近年堅調に推移していた(下図)。しかしコロナ禍においては、おこもり消費と圧倒的な商品数を誇るコンビニエンスストアなどの下支えがありつつも、予断を許さない状況にある。
和菓子・洋菓子・デザート類・アイス類の市場規模と前年度比|(注)メーカー出荷金額ベース/2019年度は予想値。このグラフには大手チェーンの数字も入っている。出典:矢野経済研究所(2020年版菓子産業年鑑 和・洋菓子、デザート編)より
ホテル需要などの大型消費も減り、中小のケーキ・洋菓子店にとっては決して安心できない。外部環境が厳しい中、生き残りの施策が打ちにくい主な理由は4つある。
・ケーキは廃棄ロス率が高く、小型店ではリスクを吸収しにくい
・機械化へのハードルが高く生産効率が低い
・乳製品などの原材料の高騰に影響を受けやすく小売価格へ上乗せしづらい
・来客中心のモデルで商品が繊細なために配送に弱い
スケールしにくく、加えてコストのかかるPRの面も弱い。それでも地域に根ざしたケーキ屋さんは常連さんを基盤に頑張ってきているし、独立したパティシエといった差別化店舗も人気の店がある。だが、多様化の時代にどちらかといえば職人世界の古い体質のケーキ・洋菓子店の未来は決して明るくはない。
そこに、「ケーキでみんなが幸せになれる」と訴える若者がやってきた。
ケーキ業界の課題は解決できる
Cake.jpを牽引する高橋は、もともとweb広告の制作を手がける会社を起こし、大手の下請けをこなしていた。
cake.jpのwebサイト
「私はエンジニアでしたがデザイン寄りの仕事を多く抱える中で、私の作りたいもの、作れるものが、お祝いやボランティアの方向性と合っていると感じていました。それを生かしてサービスを起こせないかと、ずっと考えていたのです」
現在のCake.jpのwebサイトが見やすいのは、彼の出自によるものかもしれない。制作会社として4年、下積みを重ねお金を溜め、サービスの立ち上げにこぎ着けた。