ライフスタイル

2020.08.22 19:00

運命的な出会いからワインの道へ ソノマの日本人醸造家

オーナーのフリーマン夫妻(ワイナリー提供)

オーナーのフリーマン夫妻(ワイナリー提供)

ホワイトハウスには専属のワイン専門家がいる。アメリカ大統領の晩餐会で供されるワインの選定は、その人物の大事な仕事の一つ。ワイン生産者にとって、大統領の公式晩餐会で自分たちのワインが提供されることは最上級の名誉だ。

日本人で、その栄誉を受けた唯一の醸造家がいる。カリフォルニアのソノマに拠点を持つ、フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー(Freeman Vineyard & Winery)のオーナーであり醸造家である、フリーマン・聰子(あきこ)氏だ。2015年、オバマ元大統領が安倍首相を招待した晩餐会で、フリーマンのシャルドネ「涼風」が選ばれ、脚光を浴びた。

今回は、あきこさんが夫のケンさんと二人三脚で運営するフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーを紹介したい。




運命の出会いから醸造家の道へ


物語の始まりは、オーナー夫妻のケンさんとあきこさんの出会いまで遡る。舞台は1985年のニューヨーク。当時、美術史を学ぶために留学中だったあきこさんは、友人の誘いで出席したパーティーで、ハリケーンによる悪天候でヨットの旅が中止となり、予定外にこのパーティーに来ていたケンさんと運命的な出会いをする。当時、二人とも大学生だった。

その後、お付き合いを始め、結婚に至るが、ケンさんが長年抱いていた「ワインを造りたい」という夢の実現のため、2001年に、カリフォルニアのソノマでワイナリーを買い取った。こうしてフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーが誕生した。

あきこさんは、その時をこう振り返る。「もともとワインを飲むのは好きでしたが、自分がワイン造りをするとは思ってもいませんでした。でも、やってみたら好きだった。後から発見した形ですが、心から打ち込めることが見つかり、とても運が良かったです」

エレガントなワインが造れる場所を探し求めて


フリーマンは、ナパの西側に位置するソノマのセバストポル(Sebastopol)を拠点とする。ソノマは広大なエリアで、多様な気候や土壌がある。それにより、植えられているブドウ品種も多様で、場所によって、同じ品種でも育つブドウの個性も大きく変わる。

その中でも寒流が流れる太平洋に近く、海から発生する霧の通り道となる冷涼なスポットを選ぶと、エレガントで抑制されたスタイルを表現することができる。

そして、実際にこの地を訪れると実感するのが、昼夜の寒暖差だ。日中は日差しが強く、半袖でも汗ばむくらいであっても、夜から朝方にかけては、厚手のジャケットが必要なほど気温が下がる。カリフォルニアでは、この一日の激しい寒暖差がブドウの過熟を防ぎ、酸が下がるのを抑え、高品質のブドウが育つ重要なポイントとなる。

あきこさんは元々ブルゴーニュのワインが好きで、自身もそのようなワインを造りたいと考えていた。ワイナリーを始めると決めてから、エレガントなワインが出来る場所を3年間かけて探しまわり、今の場所を見つけたのだ。
次ページ > 海から近い冷涼なスポットにある自社畑

文・写真=島 悠里

ForbesBrandVoice

人気記事