地元でも愛されるワインに。そして、これから…
当初から、カーツマン氏のもとで、醸造を手伝っていたあきこさんだが、2009年から2010年にかけて、正式に醸造責任者のバトンを受け継いだ。
以前、あきこさんは「エドがいつも醸造タンクを洗ったり、ワイナリーをきれいに掃除していて、わたしも一生懸命お手伝いしていたら、いつの間にか醸造家になったのですよ」と、冗談交じりに笑顔で話してくれたが、師匠のカーツマン氏から実践で醸造を学んだ。
自宅もワイナリーのすぐ側で、栽培から醸造まで、ハンズオンでワイン造りに携わっている。
フリーマンのワインは、アメリカのソムリエや評論家からも評価が高い。サンフランシスコのレストランや、地元ソノマのヒールズバーグの三ツ星レストラン「SingleThread」のワインリストにも採用されている。
冒頭のホワイトハウスのワイン専門家の目に留まったのも、彼がワシントンDCのレストランで、フリーマンのワインを飲んで感銘を受けたことがきっかけだった。
自社畑は、数年前から完全にオーガニック栽培に切り替えた。これからは、いかに土を元気にして、その土で育つブドウが美味しくなることを期待している。
「ワインは自然の産物です。土地の声を聞いて、土地が語りかけてくるものを、自分が通訳代わりになり、翻訳してワインとして届けたい。醸造家としては、あまりいじらずに、その年の特徴が出たものを造りたいです」とあきこさん。
そして、新しい試みとして、Yuki畑に少量植えている冷涼なシャルドネから、密かに、スパークリング・ワインを仕込んでいる。他のワインと同様、人任せにはせず、全工程を自分たちで手がける、彼女のこだわりが詰まったワインだ。
シャルドネの白ワインと、ピノ・ノワールの赤ワインは、どちらとも日本でも手に入るので、ぜひ一度、彼女がブドウに込めた思いを味わっていただきたい。
島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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