フリーマンのピノ・ノワールの自社畑は、いずれも海から近い冷涼なスポットにある。
ワイナリーの側には、リンゴ畑だった土地を開墾してブドウを植えた「Gloria Vineyard」が広がる。海から15キロの冷涼な場所にあり、標高も高い斜面の畑だ。「Gloria」という畑の名は、偶然にも、あきこさんとケンさんが出会うきっかけとなったハリケーンの名称でもあったというから、この畑との出会いも運命的な出会いと言える。
あきこさんはこう解説する。
「Gloriaのピノ・ノワールは、赤い果実に、みかんの皮やオレンジの香りがふわっと広がるのが特徴です。我が家では、黒オリーブのタプナードを添えたローストしたサーモンと合わせます」
さらに海に近く、標高も高く、より冷涼な場所にあるのが「Yuki Vineyard」だ。2007年に取得し、あきこさんの甥の名前をつけた。
海から7キロほどの場所にあり、風も強く、急斜面にある畑だ。
そのため、Gloriaより日照時間が1時間ほど少なく、より熟した果実味が出るGloriaのワインに対し、Yukiのワインはセイヴォリーさが特徴のピノ・ノワールになる。
あきこさんは、「昆布だしのような旨みを感じるワインで、醤油系の料理との相性がよく、我が家では、サーモンにねぎ味噌をのせたものと合わせます」と言う。
そして、あきこさんの渾身作が「アキコズ・キュヴェ(Akiko’s Cuvee)」だ。
当初は、夫妻の親しい友人であるエド・カーツマン氏が醸造家を務めていて、エドさん、ケンさん、あきこさんが各自ブレンドを造り、その中からみんながブラインドで一番良いものを選んだところ、毎年あきこさんのブレンドが選ばれることから、彼女の名前を冠したワインとなった。今では、あきこさんがブレンドを手がけている。
これは、GloriaとYukiのピノ・ノワールのワインをブレンドしたものだが、あきこさんはこう語る。
「両方の畑のいいところどりです。骨格がしっかりしていて酸もあるため、油が多い料理とも合います。和牛ステーキやラムチョップもよいですし、意外にチョコレートケーキとも相性がよいのです。」
昨年、筆者が、あきこさんとプライベートでディナーをしたときに持参してくれたのがアキコズ・キュヴェの2011年だった。明るい果実に、スパイスや旨みが感じられ、品格があり、まさに、あきこさんのようにエレガンスとチャーミングさが魅力のワインだ。