閉店や撤退を決めるブランドがある中、バングラデシュをはじめ途上国に工場をもつアパレルブランド「マザーハウス」は、店舗営業の再開後には昨年を超える売り上げを記録し、オンライン販売での注文も伸び続けている。逆風の中でどのような未来を見据え、戦略を打ち立ててきたのか、代表の山口絵理子に話を聞いた。
コロナ禍でもお客様の視線を離さない工夫
──アパレル業界全体の需要が落ち込む中、どのような方法で売り上げを伸ばしていったのでしょうか。
私たちのブランドは、直営店40店舗での販売を基本としていました。以前までオンラインでは、1店舗分ほどの売り上げしか出ていなかったんです。しかし、店舗での営業自粛をする中で、デジタル領域でもより存在感を増していかないと先行きが見えないなと思いました。
そこで、ブランドの公式チャンネル、代表の私と副代表の山崎がそれぞれYouTubeチャンネルを開設するなどデジタルシフトへの投資を進めています。そのほかにも、店舗からウェブチームへの部署間移動を柔軟にしたり、アパレル業界の中ではかなり早い段階でオンラインショップにチャット機能もつけたりしました。
マザーハウスの特徴でもある革のケア方法をライブ配信したり、バングラデシュなどの生産地と繋いで中継をするなど、お店が閉店してもお客様が離れない状況を作れたと思います。
──ご自身で実際にYouTubeチャンネルを開設してみて、新たな気づきはありましたか。
私のチャンネルでは、デザイナー目線から商品へのこだわりや想いを語っています。山崎のチャンネルではより経営に関する話、公式チャンネルでは店舗スタッフによる商品説明をするなど、それぞれ役割が違うので視聴者層や届く声も違いますね。
私の場合は、オンラインで購入するか迷われている方が動画で商品の背景を知って購入まで繋がるケースが多く、新たな販売ルートができたことは大きな成果でした。また、お客様から商品の使用感や改善ポイントなど生の声をいただける機会になっており、デザイナーとして助かっています。お客様のご意見は、やはり店舗が営業していないと入ってきにくい情報なので貴重ですね。