──今回のリメイク事業で工夫された部分や難しかったところを教えてください。
リメイクや解体は、実はすごく難しいことです。まず、お客様から商品を巻き戻さなければいけないので、店舗での告知から始めました。これは直営店を持っていないと難しい試みなので、お客様と繋がっているという私たちの強みで他のブランドと差別化できる点だと思います。回収後もただザクザクと切ればいいわけではなく、解体できるところを見極めながら細切れの資材ばかりが集まってくるわけです。
新作を作る際には、大きな革から1つのバッグを作るのでシンプルで軽いバッグが作れますが、リメイクの場合は革の硬さも色もバラバラなのでデザインも変わってきます。オンラインで商品を目にすることも考えて配色をカラフルに、またこれまでの柔らかいイメージではなく、箱型のデザインに挑戦することにしました。
通常はリメイクというと、バッグなどの場合は持ち手が短くなるなどのマイナーチェンジが主流です。ですが私は、新作と並べても遜色のないくらい可愛くて全く新たに生まれ変わったものを作ろうと思っていました。既存のものを少し変えるくらいでは、全然インパクトが足りない。
サステナブランドといっても、フランスではエコ100%のブランドが当たり前のように並んでいて、結局商品が浸透するかどうかは「可愛さ」にかかっているんです。そこに対してもちゃんと答えを出していこうと思いました。
RINNEシリーズは、現在バッグと小物の展開ですが、すでに別カテゴリの希望や男性用の要望の声をいただいています。今後は、洋服やジュエリーなどにも展開できたらと考えています。このシリーズは、私たちのブランドがお客様から商品への愛着のバトンタッチできることの証拠でもあるし、新作と同じくらいのボリュームを取ることができれば本当の意味での循環になりうると期待しています。
クリエイティブと経営はもっと近付くべき
──新型コロナの影響でサプライチェーンの見直しなど、大量消費・大量生産への疑問が高まりつつあります。持続可能なものづくりの形とは、どのようなものなのでしょうか。
私たちも途上国に生産地を持っているので、彼らが持続可能な生活をしているかをいつも気にしています。ファストファッションの聖地とも言われるバングラデシュでは、一方的な生産中止で貧しい人がさらに貧しくなっている現状です。その地域で作ることが本当に持続可能なのかどうか、ものづくり側の疑問が出てきていると思います。
私たちが自社工場にこだわって途上国のスタッフに給料を払い続けていることは、現地では珍しいことなのですが、その点を日本であまりアピールできていないことがブランドとして課題だと感じています。今回の新型コロナで、雇用することの重さを改めて感じました。海外のスタッフだけで600人ほどいますが、彼らの命を守っているんだということをもっと日本のお客様に伝え、ブランドの力として反映できたらと考えています。
生産国でもロックダウンが解かれ、少しずつ工場が再開している(画像=マザーハウス)
ファクトリーブランドとオンファクトリーでは、ニュアンスが違ってきます。私が起業した頃は、ファクトリーが全面に押し出されバングラデシュ好きのお客様が買いに来てくださるほどでした。現在ではお客様の7割が通りすがりでお店を知ってくれた方で、そういう方々にコアなお客様しか知らない情報をいい形でブランド化して伝えたいですね。