──そのようなデジタル戦略が、店舗での売り上げにも繋がったと?
サステナブランドでは、直営店がダメになった途端にうまくいかなくなることが多いので、(上記のような方法で)ブランドパワーを効かせることが大事です。ただし、このような状況下で本当に守らなければいけないのは、スタッフのマインドやメンタリティーなんです。
閑散とした店内で売り上げを管理する店長さんは、本当に苦しいと思います。そんな厳しい時でも、みんなのメンタルを保ちながらどうやってお客様を迎えるのか。そのためにも、経営陣の方から積極的に「店舗スタッフを守る」というスタンスを示したり、現場の声を吸い上げることが大切です。
本音を言えば、がっつりデジタルに移行したい(笑)。けれど、全社でそういう方針を打ち出すとお店のスタッフはモチベーションが下がってしまいますよね。メッセージや方針の誤解がないように、きちんと説明をすることは難しいけれど大切なことだと思っています。
また、「もしもし人事」というスタッフ向けのお悩み相談窓口や、店舗の売り上げだけでなくリピーターの数などで表彰をする評価システムの改革なども行なっていきます。このような取り組みで店舗が復活した時の力が変わってくるのだと思っています。
求められているもの、本当に必要なものを考える
──先月リメイク事業として「RINNE」をリリースされました。なぜいま、回収サービスを始めようと思ったのでしょうか。
新型コロナが深刻になり始めた3月というのは、実は毎年新作を出していて、1年のうちで最も利益の出る時期なんです。ところが、今年の状況では買い物をする雰囲気ではないし、例年通り新作を出しても売れないのではと思いました。
それよりも、クローゼットの整理をする人が増えて「本当に必要なものってなんだろう」と考える時期かな、と。そういうお客様に対してブランドとしてできることは、上から新作を押し付けるのではなく、オルタナティブな新しい循環として必要なくなった商品を回収し、新たな息吹を吹き込んであげることだと思ったんです。
そのとき、3年ほどお世話になっている日本の修理工場が百貨店からの注文が減り、経営状況が厳しくなっていると聞きました。このような加工工場や修理工場も私たちのコミュニティであり、彼らを助けることもミッションなのです。お客様のマインドにも合致し、工場も救える回収サービスを始めれば、みんながハッピーになると思ったんですね。
7月22日に発表された回収プロジェクト「RINNE」のバッグ。どれも世界に1つだけの商品だ(画像=マザーハウス)