3. 修正する
編集の仕事は、削除と凝縮だけではない。間違いを直すのも大事な役目だ。単純な文法の間違いもあれば、論旨の構成に欠陥が見つかる場合もある。こうした修正を正しくおこなうためには、文章や作品の全体的な狙いを明確に把握しておくことが不可欠だ。
マイケル・カーンはスピルバーグの作品を編集する際、言われたとおりのことはやらない。スピルバーグが本当に伝えたいことを汲みとり、それを実現させるのだ。作品の大きな狙いを正確に把握しているから、監督自身が言葉にできない点まで修正することが可能になる。
仕事や生き方でも、自分の本質的な目標を明確にしておけば、それに合わせて行動を修正できる。自分の行動はきちんと本質目標に向かっているだろうか、と振り返ってみてほしい。
もしも間違った方向に進んでいたら、正しく編集し直せばいい。
4. 抑制する
すぐれた編集者は、作品に手を入れすぎない。何もしないほうがいいこともあると知っているからだ。編集が「目に見えないアート」と呼ばれるもうひとつの理由である。
何でも手術するのが名医というわけではないのと同じで、すぐれた編集者は自分を抑制し、本当に必要なときにしか手を出さない。
抑制すべきところを知っておくと、人生はもっとうまくいく。反射的に手を出すのをやめて、何もしないことを選ぶのだ。たとえば、社内メールで議論が巻き起こっているとき、反射的に「全員に返信」ボタンを押さない。ミーティングのとき、よけいな口出しをしない。
まずは立ち止まって、様子を見る。すると、全体の流れがクリアになる。「より少なく」というエッセンシャル思考のやり方は、すぐれた編集術でもあるのだ。
非エッセンシャル思考の人は、やたらと何にでも手を出して、いざとなったら編集しようと考える。だが、編集のタイミングが遅れると、どうしようもなくなって不本意な削除を選ぶことになるかもしれない。最善の結果を得るためには、こまめに行動を振り返り、小さな編集を積み重ねたほうがいい。
エッセンシャル思考で生きるということは、削除と凝縮と修正を、日々の習慣にすることだ。まるで呼吸するように、自然に生き方を編集しよう。
『エッセンシャル思考』
グレッグ・マキューン/著 高橋 璃子/訳
※本稿はグレッグ・マキューン著『エッセンシャル思考』(かんき出版)より、一部を抜粋編集したものです。