オルビスでは社員の約95%がリモートワークに移行、自粛期間中は全実店舗の臨時休業という大打撃を受けたものの、2月に発売した「オルビス オフクリーム」など新たなヒットも生み出し、オルビスの第一四半期の営業利益は前年比0.7%減に踏みとどまり、第二四半期は4.4%増とプラスに転じている。
7月には表参道に初の体験特化型施設「SKINCARE LOUNGE BY ORBIS」をオープンさせ、コロナ禍の逆風の中、アクセルを踏む。
オルビスを率いる代表取締役社長の小林琢磨氏は「コロナ禍の現状が困難なのは間違いありません」と前置きした上で「でも、2年前の改革期の方が苦しかったかもしれない」と明かす。
オルビスが“第2創業期”と銘打つほどの大胆な組織改革が、コロナ禍の困難な局面で結実した。
「制度から整え出すと、会社のポリシーが反映されずに組織が機能しない」と語る小林氏。変化に柔軟に対応できるオルビスの組織の作り方を聞く。
「過去」の話より「未来」の話が多いかどうか
社長就任以降、小林氏は『オルビス ユー』シリーズや“肌のトクホ”『オルビス ディフェンセラ』などヒット商品が生み出される組織作りを牽引してきたが、2018年1月の社長就任当初は、売上が停滞する衰退危機を迎えていた。
「オルビスは、80年代後半〜90年代前半のバブル期に、当時主流だった“華美な化粧品”とは真逆の『肌本来の力を引き出すシンプルなスキンケア』を打ち出しました。その後のデフレ時代に価値が支持され、飛躍的に売上を伸ばしたものの、売上を維持し合理化を進める中で、自らのアイデンティティを薄めていった。それが市場における存在感を低下させ、売上の停滞にもつながっていました」
全社員と対話することで見えてきたのは「組織風土」の改革だった。
「当時売上が伸び悩むなかで、既得権益を打ち破り、新たなチャレンジをしていく必要がありました。その挑戦や新たな風土を作るためのプロジェクトメンバーに求めたのは、『未来志向』と『オープンマインド』の2点。面談で過去の実績をアピールする人よりも、これからのオルビスをどうしていきたいか、そのためにどんな取り組みがしたいのか、自分起点で未来を語れる人を選びました」
2018年を第二創業期と位置づけ、プロジェクトメンバーとともに見失われていたアイデンティティを問い直し、「ここちを美しく。」というブランドメッセージを定めた。
「アンチエイジング(加齢に抗うこと)」ではなく、「スマートエイジング(自分らしく年を重ねること)」をブランドとして提供する価値に据えたのだ。
それを機に、経営者として全社員にも積極的な変化を促した。