リモートワーク下でも存在感を見せるマネジャーの役割
「会社である以上、ブランド全体のパフォーマンスを高める適材適所かどうかを重要視しますし、今回のコロナ禍のように社会の流れに合わせて、組織の優先順位やすべきこと、手段は変わっていきます。だからこそ、会社のビジョンや価値観に共感できているか、コミットメントできるかというのは、会社と個人が対等な関係であるためにも一番大事だと思います」
会社のビジョンや目的のグリップを一人ひとりが握れるか。
それには、組織の“結節点”となるマネジャーの存在が非常に大きいと、小林氏は話す。彼らのリーダーシップや振る舞いの積み重ねがカギとなる。今回、緊急事態宣言下でリモートワークへの全面移行を余儀なくされたものの、そこでのマネジャーの存在感は大きかった。
「多くの企業は1、2ヶ月間であれば、足元のTO DOがある程度決まっていると思うのですが、大切なのは、リモート下でも“新たな価値”を作れるかどうか。そのためには、マネジャーがメンバーの主体性を引き出すことが重要です。
メンバー一人ひとりに何を期待し、何を求めているのか。『自分の仕事がどう会社につながっているのか』と、それぞれの解像度を高めて伴走する役回りです」
顔を突き合わせているときは「なんとなく」できていても、オンラインになるとうまく機能しないのは想像に難くない。オルビスはリモート下ではチャットツールSlackを活用し、部内のコミュニケーションはもちろん、週2回程度ある経営会議や各部門会議の内容もすべてオープンにした。フルリモート下で、より部門やチームを超えるコミュニケーションを活性化させた。
実際、4月に開始したビューティーアドバイザーによる「オンラインAIチャットサービス」は店舗部門とEC部門の垣根を越えて実現した施策だったが、これも社員たちの自発的なコミュニケーションから生まれたアイデアだ。
「個々人からやりたいアイデアが出てくるからこそ、階層間における意思疎通の重要性がますます高まってくる。組織の結節点としてのマネジャーの力量が問われてくるわけです。そういった意味では、直近の社内調査でもマネジャーに対する評価はアップしており、しっかりと機能してくれているなと実感しています」
最後に、これから目指す組織としてのあり方、実現したいことを聞いた。
「オルビスでも“抜擢人事”があるのですが、“抜擢”という言葉があるということは、年功序列が前提の社会である表れだと思うんです。それぞれの役割にふさわしい人が、たまたま30歳だったり、たまたま50歳だったりするだけの話。
それこそが、年齢や固定観念にとらわれず、自由に多様な可能性を選択できる『スマートエイジング』な社会なんでしょうし、オルビスとしてそれを実現したいと考えています」
小林琢磨(こばやし・たくま)◎2002年にポーラへ入社、2009年にグループの社内ベンチャーで立ち上げた敏感肌専門ブランドDECENCIA取締役、2010年同社代表取締役社長に就任。急成長に導き、同ブランドを大きく飛躍させた後、2017年オルビスのマーケティング担当取締役、2018年に代表取締役社長に就任。同年、新生オルビスのビジョンを掲げ、「ORBIS U(オルビス ユー)」、翌年1月には「飲む」次世代スキンケア「ORBIS DEFENCERA(オルビス ディフェンセラ)」を発売し、化粧品と食品それぞれにおいてオルビス史上最大のヒットを立て続けに生み出すなど、リブランディングと構造改革を実行している。ポーラ・オルビスホールディングス取締役を兼務。早稲田大学大学院MBA。