「漠然と『会社が何かをしてくれる』ではなく、自分自身が会社に何を提供できるかを考え実行し、会社はそれを評価してしっかり報酬を与える。それが個人と会社の健全なあり方だと思っています。
ブランドとして『スマートエイジング』を大切にしている以上、誰かと比較するのではなく、自分がどうすれば『心地よい』のか、社員自身も選択できる人であってほしい。どんな服を着るか、どんなふうに働くか……自立的に考えてほしいんです」
制度から変えても、組織は変わらない
「組織風土」改革の両輪として取り組んだのが今年4月に行なった「評価制度」の刷新だ。オルビスの組織改革において、「制度」の着手が組織改革プロセスの最後となったのには、理由がある。
「グループの基幹ブランドであるポーラにいた時、制度改革が3回ほどありましたが、個人の感覚としては制度だけ変えても結局何も変わらなかった。変わらないことの何が一番しんどいかというと、『これは結局何のためなのか?』『改革と言いつつ、本当に変わろうとしてないよね』と、社員が会社に対して期待や興味がなくなることです。
コロナ禍における昨今の各社のリモートワーク推進制度もそうですが、『リモートワーク移行に伴い、成果主義の評価制度に変えよう』としても、絶対に機能しない。制度だけ整えても会社の姿勢や運用する一人ひとりの意識と組織風土が変わらなければ、意味がないんです」
1月には評価制度改定に先駆ける形で組織編成を実施し、年齢や経験を問わず、ミッション・ビジョンへの強い共感や、目標に対する責任を持つ社員をマネジャーや部長など各役職に任命した。
これまで主任クラスだった人が、一足飛びに役職に就いた事例もあった。それら“抜擢人事”を正当に評価するためにも、新たな評価制度では「ジョブ型評価制度」を導入し、年功序列制度を廃止。
定量的なKPIとともに、オルビス行動指針を体現しているかを、上司だけではなく部下やメンバーが多角度的に評価することで、組織として大切にしている価値観を、実際の行動につなげる仕組みづくりを行なった。
「年功序列は、実は個人にちゃんと向き合えていない制度ではないかと思うんです。プレーヤータイプの人が本人の意向や適正にかかわらずマネジャーを務めることになり、結果的にチームとして成果を出せないのなら、当事者にとっても会社にとっても不幸ですよね。
あらゆる社員が“出世”を目指すことを是とするのではなく、マネジャー職はマネジャー職として、プロフェッショナル職はプロフェッショナル職として、それぞれの役割を果たすことで組織を運営していけばいいし、そういうキャリアパスがあっていい。
ブランドとして『スマートエイジング(自分らしく年を重ねること)』を大切にしている以上、年齢的に適切だからとか、誰かと比較するのではなく、自分がどうすれば『心地よい』のか、社員自身も選択できることが大事なんです」