彼は15歳の時にマーティン・ルーサー・キング牧師と出会い、1960年代には多くの市民権運動、特に学生運動をリードした。非暴力運動を貫く中、何度も警察や白人至上主義者からの暴力を受け逮捕されたが、その一連の出来事が報道されるたびに、社会の差別政策が見える化され、世論を変えていった。
Black Lives Matterムーブメントが起こる社会的な土台は、長い年月を通して、ルイス氏のような多くの黒人活動家や、その支援者たちによって築かれてきた。
ここでルイス氏のように、地道に自分の立場でできることを追求し、次の世代にバトンタッチしたアーティストを紹介したい。
オバマ大統領から「大統領自由勲章」のメダルを贈られるジョン・ルイス氏 2011年ホワイトハウスで(Photo by Alex Wong/Getty Images)
ゴードン・パークスという写真家をご存知だろうか。1912年アメリカカンサス州の田舎に生まれた彼は、質屋でカメラを手に入れたことから、独学で写真を学んだ。彼は後に写真だけではなく、映画監督として、ミュージシャンとして、または詩人としても活躍している。アフリカ系アメリカ人に対するステレオタイプを正すため、内側からの視点で黒人の素顔を写すことに取り組んだ。
ゴードン・パークスにしか撮れなかった黒人の真の姿
彼の自伝「A Choice of Weapons(武器の選択)」では、社会の不条理と闘うための武器としてカメラを選び、自分のスキルと差別の被害体験から得た理解をもって、彼にしか撮れない作品を生み出すに至るまでの人生が綴ってある。
パークスは1929年に起こった世界恐慌後、特に30年代後半から40年代前半のアメリカ社会を記録するために立ち上げられたFSA(Farm Security Administration:農業安定局)プロジェクトのために雇われた12人の写真家のひとりで、唯一の黒人だった。
当時の政府ビル内には、有色人種はほぼ給仕か用務員としてしか存在していなかった。ゴードン・パークスは、そこの職員であるにもかかわらず事務所内でも差別を受けた。
そんな中、彼は違いを強みにして自分にしか撮れないものにフォーカスを絞っていく。それは、喜怒哀楽に満ちた黒人たちの真の姿だった。当時の白人至上主義のメディアの目には見えていなかったアメリカ社会の側面だったからだ。
その当時は奴隷制が終わってから50年が過ぎた頃だったが、黒人たちの経済状況が向上するわけもなく、タダ働きも同然のような雇用にしがみつくしかない状況だった。
奴隷時代に黒人の人々が受けた精神的、身体的、性的暴力は大きなトラウマとなり、様々な虐待や精神的重荷となってその後の世代にも虐待の連鎖となって受け継がれてきたようだ。
私自身、フォトジャーナリストとしてアメリカの性暴力被害者の取材をする中で、人種関係なく多くの被害者の親もその前の世代も、何らかの虐待を受けた経験があることに驚かされた。ただ、虐待を受けた人が同じ虐待を繰り返すかというとそうではなく、虐待は形を変えて次の世代に受け継がれることが多い。
それに対し、被害者自身が家庭内の虐待連鎖を自分の被害で止めると決心する人も多く、そのような内側からの働きかけこそが、真に社会を変えるのだと教えてもらった。