ビジネス

2020.08.21

競合はいない。「セントラルキッチン型」再生医療ベンチャーの挑戦

セルソース株式会社 代表取締役社長CEO、裙本 理人氏


さらに新しくトライしたのはオンラインを通じた即時の情報収集です。オンライン学会の画面上にQRコードを提示して、セルソース独自のアンケートページを用意したのですが、オンライン上でQRコードにアクセス頂くことで医師の生の声を収集し、フィードバックを得たりすることができました。そこから営業のリード獲得ができるようにもなったわけです。

オンライン営業の進化も大きなモメンタムであったと思います。

従来のMR(Medical Representative:医薬情報担当者)は対面が基本で、「先生の出待ち」のために全国に数百人単位を動員して、営業活動を行うような側面もあったかと思いますが、そもそもセルソースには人員がおらず、当初からオンラインを使わざるを得ませんでした。それが、オンライン営業が一般化したことにより、当社の営業活動は、よりスムーズに進むことになりました。極めて効率的になったということです。

元グーグル日本代表村上憲郎氏も


──人との出会いの話もありましたが、他にはどんな人との出会いがありましたか?

社外取締役に元グーグル日本代表の村上憲郎さんもいらっしゃいます。通常、一介のベンチャーに村上さんのような方が社外取締役に就任するなんてことはないと思うんです。

村上さんは有名人ですので、当然、私は一方的に存じ上げていたわけなんですが、セルソースを創っていく過程で、村上さんにぜひ、社外取締役になっていただきたくて、知り合いの知り合いという感じで、無理やり知己を手繰(たぐ)ってお会いしたんです。

確か、お会いしたのは、代官山の蔦屋書店だったでしょうか、なんとその日のうちに快諾していただけたんです。今では経営の大先輩として、ガバナンスやファイナンスをはじめ上場企業の経営について、いつも貴重なアドバイスをいただいています。



取締役の花木についても思い出があります。彼は富士フイルム子会社のジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの薬事担当でした。偶然、事業を通じて知り合ったんですが、再生医療の関連法規にとても詳しかった。彼と一緒に仕事ができたら素晴らしいと思って、愛知県の蒲郡市(がまごおりし)の自宅付近まで押しかけて、近くの居酒屋に一緒に行って、セルソースのビジョンを説明して、力を貸して欲しいと言ったんです。

CFOの雨宮は伊藤忠商事から、現在のauカブコム証券の前身である日本オンライン証券に転じて、当時の最短記録で一部上場させたときの責任者でした。雨宮とも、たまたま出会ったのですが、20年近くCFOをやっていた人物だけあって、ビジネスサイドへの理解も深い、本物感満載のCFOという印象を受けました。面接では、完全に立場が逆転して、自分が選ぶ立場ではなく、自分が会社の魅力をプレゼンテーションする立場だった。逆面接ですね(笑)。
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取材・文=曽根康司 撮影=帆足宗洋 編集=石井節子

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