ビジネス

2020.08.21 08:30

競合はいない。「セントラルキッチン型」再生医療ベンチャーの挑戦


そうして、役員が揃い始めたわけですが、自分より優秀な人を採用するのがモットーです。そうしないと自分が組織のキャップ(蓋・天井)になってしまいますから。事業にコミットするメンバーでちゃんとリターンを出す骨太の会社にしたいと思っています。

──マイクロソフトの採用方針に近い方針ですね。最後に、セルソースのこれからについて教えてください。

昨年上場して、ようやくスタートラインに立ったという感じです。信用・知名度の向上に加えて、ビジョンの周知を浸透させて、さらに優秀な人が集まる組織にしたいですね。資金面では、再生医療のポテンシャルはとても大きいので、上場で得た資金、営業キャッシュフローを事業拡大に投下していきたいと思っています。

事業領域では、再生医療が整形外科の領域で果たせる役割は無限にあると思っています。ビジネスの目利きを磨き込んで、チャンスを見逃さないようにしたい。グローバル展開でいうと、日本は高齢先進国というアドバンテージがあります。このアドバンテージをグローバルに横展開したいです。

社会との関わりでいうと、社会課題としての自由診療の意味に対峙していきたいと思っています。現在の日本の歳出約100兆円のうち、約3分の1が社会保障関係費、さらにそのうち約4割弱が医療に関連する費用で、12兆円となっています。社会保障費はこの30年で3倍以上に膨れ上がっており、日本の財政の大きな負担になっているのは誰もが認識しているところです。

医療に関連する事業者として、この状況を放置するのは国民全体への不利益への加担だと思っています。とはいえ、国民皆保険による助け合う精神は非常に大事で、残さないといけない。でも、残したいだけでは残らないと思います。

QOL(Quality Of Life:生活の質)を担保する上で、患者の選択肢を増やし、新しい医療の在り方「インフォームドコンセント」(患者・家族・医療提供側の十分な相互理解)の上に立つ、国の財源に頼らない形の自由診療をどう提供していくか。

自由診療の価値提供をきちんと経済価値とバランスさせていくと同時に、企業努力による自由診療の価格の低廉化を進めることによって、もう一つの車輪が回り始めると思っています。自由診療と保険診療のハイブリッド医療が、今後の日本の健康を支える両輪になると思います。

戦後75年、幾多の災害、経済ショックがありましたが、今の日本の医療は前提が崩れてしまいかねないとの危機感を持っています。ターニング・ポイントはすぐそこではないでしょうか。常識を疑い、変化を恐れず、チャレンジしていきたいと思っています。



裙本 理人(つまもと まさと)◎セルソース株式会社 代表取締役社長CEO。1982年生まれ、兵庫県出身。2005年神戸大学発達科学部卒業。2007年ロシア サンクトペテルブルグ大学 留学。住友商事株式会社を経て、2015年セルソース株式会社を設立し代表取締役に就任。2019年に創業3年11ヶ月で東証マザーズに上場。



インタビュアー:曽根 康司(そね こうじ)◎株式会社キャリアインデックス執行役員、社長室長。慶應義塾大学法学部政治学科卒。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程EMBAプログラム在学中。原宿と下北沢で時計店を経営したのち、インターネット業界に飛び込む。アマゾンジャパン株式会社、ヤフー株式会社を経て、現職。「焼肉探究集団ヤキニクエスト」メンバーでもあり、全国数百件の焼肉店を食べ歩いている。

取材・文=曽根康司 撮影=帆足宗洋 編集=石井節子

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