これまでは、出張先に向かうビジネスマンや超エリート層だけのものと考えられてきたプライベートジェット業界が、ここに来て急成長を遂げている。米国に住む多くの人が、民間航空会社が講じる安全衛生管理対策は不十分であると、不安を覚えているためだ。
ビジネス航空機のインターネットサービスとエンターテインメントを提供するゴーゴービジネス(GoGo Business)によると、2020年6月現在、チャーター便の予約状況は、引き受け能力の90%まで回復している。業界大手の話によると、近ごろは、予約の大半が新規顧客からのものだという。
海外在住者の帰国ラッシュ後は、一時足踏み
今でこそ新規顧客を続々と獲得しているが、ここに至るまでの道は平たんではなかった。新型コロナウイルス感染症が拡大し始めたころは、米国外に住む民間人や、企業、支援組織のスタッフなどを帰国させるために、プライベートジェットのチャーターが相次いだ。
米旅行誌コンデナスト・トラベラーによると、プライベートジェット運航会社ジェットスイート(JetSuite)では3月に、新規仲介業者からの依頼が20%増加した。カタール航空のプライベートジェット子会社、カタール・エグゼクティブ(Qatar Executive)でも、同じく3月に依頼が急増。前年比で26%増となった。
ところが、そうした流れは急に止まった。プライベートジェットにも、民間航空会社とほぼ同じ規制が課せられたためだ。倒産に追い込まれた企業もあり、ジェットスイートは2020年4月に破産を申請した。
その時期を耐え抜いて運航を継続できたプライベートジェット企業は現在、活気づいている。世界各国で、新型コロナウイルス感染症を封じ込めるための規制が緩和されたものの、多くの人が民間航空機での移動に尻込みしていると思われるためだ。