この出来事をめぐるニュースの多くは当事者の行動に関するもので、女性と男性のどちらが悪いのかや、社会で横行する無礼な行為についての議論がなされた。
そうしたニュースの中で、十分に議論されなかった問題点がひとつある。私たちは、2人の行為にばかり目を向け、問題の本質を見失っていた。それは、航空会社が座席の間隔をどんどん狭め、乗客が限界に達しているという点だ。
人々は機内の狭いスペースに閉じ込められることに、どれほどうんざりしているのだろう? 前の座席がリクライニングできないようにする器具も販売されている。その名も「ニー(膝)ディフェンダー」と呼ばれるこの器具は機内での使用が禁じられているが、それでも使おうとする乗客はいる。ユナイテッド航空では2014年、機内でニー・ディフェンダーの使用をめぐって2人の乗客がいさかいを始めたため、予定外の場所に緊急着陸して2人を降機させなければならなかった。
旅客機の座席の前後間隔は狭まる一方だ。40年前の大手航空会社のエコノミークラスでは31~35インチ(約79~89cm)だったが、現在では29~33インチ(約74~84cm)へと縮小。座席の横幅も、当時の約18.5インチ(約47cm)から17~17.5インチ(約43~44cm)まで狭まっている。
アメリカン航空は、ボーイング737MAXのシートピッチを現行の31インチから29インチへと縮小する計画だったものの、利用者や社員からの反対の声を受けて再検討を決めた。29インチといえば、格安航空会社のスピリット航空やフロンティア航空の28インチと1インチしか変わらない。