山中伸弥教授に問う、新型コロナウイルスは社会と人体をどう変えるのか?

7月4日(土)19時半〜放送の「NHKスペシャル」に出演する山中伸弥教授


──まさに働く環境は一変しました。日常も変わり、マスクの着用やソーシャルディスタンシングなどが浸透していますが、こういった生活習慣は今後も続くと考えるべきですか。

今後1〜2年、有効なワクチンや治療法ができるまでは必須でしょう。ですが、その後はまた元に戻る可能性はあります。だからこそ、今回の対策を教訓に、忘れた頃にやってくる感染症に対する備えをしっかりと行うべきです。

日本がこれだけウイルスによる被害を受けたのは1918年のスペイン風邪以来かもしれません。そして、時期や程度は分かりませんが、新たなウイルスの脅威は間違いなくやってきます。そのためにも、例えば検査体制や、米国のCDC(アメリカ疾病予防管理センター)のようなウイルスに対する司令塔や組織の編成などはしっかり行う必要があると思います。

──備えの重要性をもっと認識すべきということですね。ワクチン等ができるまで、我々個人はどのような備えをすべきでしょうか。

新型コロナウイルスで重症化しやすい人は、高齢以外に高血圧、糖尿病、肥満という全身性の炎症疾患を抱えている方が多いことがわかっています。ということは、ウイルス感染にかかわらず、日頃から健康を意識し、生活習慣病の対策をしていく必要があるでしょう。

私自身は、以前から健康のために走るようにしていますが、リモートワークが増えると運動不足になりやすいので、以前よりも意識するようにしています。



──食生活や睡眠、メンタル面についてはいかがでしょうか。

食生活はバランスよくすることを心がけています。ですが、睡眠に関してはまだ改善の余地を感じていますね。コロナが思った以上にストレスになっているようで、問題が出ています。私はもう十数年間、アメリカと日本を行き来する生活で、常に時差と戦うような生活をしてきましたが、ここ最近その移動も時差もなくなったにもかかわらず、以前よりも眠れなかったりすることが増えています。

メンタルのケアに関しては、前述した走ることがひとつです。最近はiPS細胞の研究に加えてコロナの研究関連にも時間をとられ、つい仕事ばかりになりがちですが、その合間に音楽を聞いたり小説を読んで仕事だけにならないようには心がけています。
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文=平井孝幸 文中写真=Getty Images

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