フェイスブックへの広告出稿見合わせは、反人種差別団体の反中傷連盟(ADL)、米有色人地位向上協会(NAACP)など市民団体が連合して立ち上げた「#StopHateForProfit(ヘイトで稼ぐな)」運動によるもの。賛同企業にはスターバックスやターゲット、ベストバイ、ベライゾン、コカ・コーラなどが名を連ね、最近は新たにファイザーやレゴ、ダンキン・ブランズなども加わった。
市場では主要企業の間にこの動きが広がってきたことが嫌気され、フェイスブックの株価は先月26日、一時8%下落した。
とはいえ、金融業界はおおむねフェイスブック株について非常に強気な見方を崩しておらず、大多数は引き続き「買い」を推奨している。
業績への影響を懸念する声もあまり聞かれない。MKMパートナーズのアナリスト、ローヒット・クルカーニは、広告ボイコットによる打撃はフェイスブックの売上高全体の5%弱にとどまりそうだとしている。
モルガン・スタンレーのアナリスト、ブライアン・ノワークの試算では、フェイスブックは広告主の上位100社との取引を失っても、収入への打撃は月10億ドル(約1080億円)ほどにとどまるという。同社の昨年の広告収入は697億ドル(約7兆4900億円)だった。
フェイスブック「ヘイト除去は他社より迅速」
調査会社のパスマティックスによると、フェイスブックで広告主の上位100社が広告収入に占める割合はわずか6%ほどにとどまる。そのうえ、「各ソーシャルプラットフォームは広告オークションシステムを利用しているため、通常は広告主を失ってもほかの広告主で代替できる」(バンク・オブ・アメリカ)という事情もある。
MKMのクルカーニは、新型コロナウイルスの影響で広告主が支出を切り詰めているという問題はあるものの、フェイスブックの場合、収入ベースが多様で、何百万もの広告主を抱えているという強みがあると言う。たとえば、世界最大の広告出稿額を誇るプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)ですら、フェイスブックの広告収入に占める割合は0.5%にも満たない。
レイモンド・ジェームズのアナリストらは、広告ボイコットによるフェイスブックの7〜9月期(第3四半期)の財務に対する影響は「最小限」にとどまると予想。フェイスブックが最近発表した対策によって、広告主の懸念が和らげられることも楽観している。
このほか、スタイフェルのアナリストらも最近のリポートで、現時点よりもはるかに広範な広告ボイコットが長期にわたって続かない限り、フェイスブックにとって大きな打撃にはなりそうにないとの見方を示している。
フェイスブックのニック・クレッグ国際問題担当副社長は1日、同社のプラットフォームではヘイトスピーチをツイッターやユーチューブといった競合よりも早く取り除いているとし、「フェイスブックはヘイトで稼いでいない」と強調した。