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2020.07.03 17:00

化け物は社会の鏡。『鬼滅の刃』に見る現代の香り|妖怪経済草双紙


『鬼滅の刃』に見る時代の香り


草双紙の代表的なジャンルの一つが化け物、幽霊、妖怪話です。おなじみの見越し入道、ろくろ首、豆腐小僧からお岩さん、お菊さんまで、縦横無尽、時空を超えたバリエーションを誇ります。

他方で、現代日本のヒットコミックをさっと思い浮かべてみましょう。古くはゲゲゲの鬼太郎、比較的に新しいところでも、ポケモン、セーラームーン、犬夜叉、妖怪ウォッチ、るろうに剣心、進撃の巨人、などなど異界、魔界の存在を中軸においているものがたくさんあります。最近では、『鬼滅の刃』が凄まじいまでのヒットぶりですよね。

コミックやアニメはお子様方だけが読んだり見たりするものではない。むしろ、ヤングアダルトが中心的なファン層です。加えて、女性読者がものすごい勢いで増えているようです。

『鬼滅の刃』の驚異的ヒットの背景には、これを支える女性読者の存在があります。

『鬼滅の刃』は、私のようなおっさん、というか前期高齢者の男からみると、優しさが目立ちます。ストーリーはオドロオドロシイし、見せ場のシーンの描写は残虐です。でも、どこかにロハスな雰囲気や安心感がある。出口のない、救いようもない禍々しさは、あまり感じないのです。作者が女性であるということが関係しているのでしょうか。あるいは、それこそ時代の香りがそうなのでしょうか。

ともあれ、平成、令和の草双紙の一つはコミックだと思います。

時代を映し、面白さもあり、固くはないが、実はかなり奥深いテーマと問題意識を秘めているもの、それが黄表紙本に代表される草双紙でした。先にご紹介した口裂け女のオリジナル、平秩東作をはじめ、黄表紙本の作者の多くが教養ある武士たちです。日常生活は、サラリーマンとして体制にずっぷり漬かっていますが、時代や政策への批判精神は旺盛でした。

江戸時代の草双紙、昨今のコミックやアニメに通底するのは、時代の制約があるとはいえ、基本、自由な精神だった。この連載コラムも、古今東西の経済、社会を自由な精神で深掘りして、タテヨコ斜めに腑分けし、そしてその最重要なバイプレーヤーとして、バラエティ豊かな妖怪に登場してもらおうと思うのです。

そんな志から、タイトルを『妖怪経済草双紙』とさせていただいた次第です。対象として考えているテーマをざっと挙げると、世界的なポピュリズムやレイシズム、陰謀論、地球環境保護とSDGs、米中関係と日本、日本と中国の感覚の違い、グローバルに強い影響を与えた経済理論、経済改革、時代の最先端を行く金融理論、オリンピック・パラリンピック、ICTによる生活・仕事の変化、地方創生、女性活躍、働き方改革などなど、です。

これらを具現化している妖怪に登場してもらうつもりです。ともあれ、妖怪経済草双紙、しばしお付き合いいただけると光栄です。

文=川村雄介

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