二人が打ち解けたところで、今度はバーカウンターを組み立て、完成したところで、ハイネケンのビールを取り出します。
しかし、乾杯を前にして、それぞれが自分の主義を強く主張しているビデオを見せられます。二人はそこではじめて、共同作業していた相手が自分と正反対の主張を持つ人物だということに気づきます。
そこで、「その場を去るか、ビールを飲みながら話を続けるか」と選択を迫られますが、3組ともその場に残り、相手のことをもっとよく知ろうと、ビール片手に語り合いはじめる……CMはそこで終わります。ぜひ「ハイネケン CM」でユーチューブ検索してみてください。
このCMは、人間はお互いにまっすぐ向き合うよりも、課題(イスやカウンターをつくるという共同作業)を遠くへ置き、一緒に歩むことで、たとえ主義が違う者同士でも仲間になれることを物語っています。
ポイントは、同じ課題に向かって歩みながらお互いを知ることで、自分の主義主張に塗り固められた他人へのバイアスが外れ、仲間というフィルターができることです。
もし今、家族や友人、会社仲間など、身近な人との関係がギクシャクしている人は、相手と一緒なら乗り越えられる課題や目標などを設定してみてはいかがでしょうか。相手が身近であればあるほど、きっと共通の目標を見つけ出せるはずです。
例えば隣の席の同僚との間に小さなサボテンを置いて、一緒に名前をつけて育ててみるみたいに、些細なことでもいいのです。一定期間だけで、夫婦の問題を一旦脇において、子どものことだけに全力集中してみるとか、ソーシャルディスタンスを保てる規模の人数でハイキングをしてみるとか、方法はたくさんあります。
この考え方や方法は、個人がつながる時代の生存戦略のひとつです(拙著『あえて数字からおりる働き方』(SBクリエイティブ、7月8日発売)に詳しい)。誰もが不安である状況で、人間関係がギクシャクしやすいことは仕方がないこと。だからこそ、それを乗り越えるために、あえて「お互いを見ず、同じ方向を見る」ように工夫することが大事なのだと思います。
連載:ポストAI時代のワークスタイル
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