ビジネス

2020.06.25 08:30

学生発のアイデアで社会をバージョンアップする

上段左から品川女子学院の井手美里、勝部友麻、中段左から川田未羽、近田沙耶、下段左から河原佳音、濱 菜ツ穂、秋吉雪穂

上段左から品川女子学院の井手美里、勝部友麻、中段左から川田未羽、近田沙耶、下段左から河原佳音、濱 菜ツ穂、秋吉雪穂

もし学生が地域や社会の課題に気づいても、解決に向けて動き出すのは難しい。「偏見なき目」と「これからの世界を担う当事者意識」を持ち合わせている彼らの声を埋もれさせてしまうのは社会の損失だ。

そんな現状を打破するべくアワードが創設された。エントリーした学生たちのユニークなアイデアと壁を乗り越えたプロセスを紹介しよう。


グレタ・トゥーンベリ(17歳)の言葉が人々の心を打つのは50年、60年先の「これからの地球」に対して向き合う世代であることと無関係ではないだろう。そんな「圧倒的当事者意識」と「偏見なき視点」を持ち合わせた中高生とともに社会を変える支援をしたい。そんな想いからForbes JAPAN SOCIAL AWARD U-18 はスタートした。

アワードを共催するのは、一般財団法人ソーシャル・ビジネス・プラットフォーム(SBP)。代表理事である田口義隆は、本財団を「グラミン銀行」の創設者でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスとの出会いをきっかけとして立ち上げた。田口はソーシャル・ビジネスという概念を知った時に、「ただの社会活動でもビジネスでもない、世界の歪みを直すこんな方法があるのか」と衝撃を受けたという。

「SBPのミッションは、『社会更新(ソーシャル・バージョン・アップ)』。社会起業家と学生、経営者をつなぎ、それぞれがインスパイアされて、能動的に社会を変えていく流れをつくりたい」(田口)

SBPでは、社会起業家やNPOのリーダーに人的ネットワークを、学生に対しては課題発見や事業創造、マネジメントのスキルを養う場を提供している。そうした活動の一環として、中高生向けのソーシャル・ビジネスに関するアイデアコンテストを開催することにしたのだ。

通勤・通学中の防災が見逃されている


2017年に行われた第1回大会では、福島県立福島高等学校のスーパーサイエンス部のチームがForbes JAPAN賞を受賞。テーマは「好適環境水による完全陸上養殖の実現」。好適環境水という魚の養殖に適した水を使ってウナギを育て、東日本大震災後に魚が以前のようにとれなくなった地元の漁業と、客足が遠のいた温泉街を活性化する。稚魚の里親を全国から募り、みんなで育てて、食べに訪れるというアイデアが評価されての受賞となった。

メンバーの1人、西澤亮輔は現在大学1年生(取材当時)。地元を離れ、東京大学に進学した。西澤はアワードへの参加を通じ、自分のテーマとは別の社会課題を発見した。それは、地方と首都圏の教育格差だ。

「他の参加者である、品川女子学院など都内の私立校の発表を見て驚きました。彼ら・彼女らにとっては、こうしたビジネスコンテストやベンチャー企業は身近な存在。でも、地方の公立高校に通う僕たちにとっては、めったにない機会だった。地方の学生は、参加どころか、そうした機会があることすら知らない人が大半なんです」(西澤)

生まれた場所によって選択肢に差があることを問題だととらえた西澤は、公教育のあり方に興味をもった。将来は格差の是正に取り組むつもりだという。

第3回大会で激励賞を受賞し注目されたのは、西澤の話にも出てきた品川女子学院だ。発表したビジネスプランは「デジタルアーカイブづくりで災害への意識向上を」。高校3年が1人、中学3年が5人、中学1年が1人というチームで参加した。
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文=崎谷美穂 写真=吉澤健太

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危機に備えろ。 「災害」を本気で考える

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