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サイバーセキュリティクラウドの大野暉社長(写真=小田駿一)

人はなぜ経営者を志すのだろうか。

この人の場合は「飢えとコンプレックス」、そして「規模と社会性の追求」にあった。

コロナショック真っ只中の今年3月、プロ経営者としては29歳という東証マザーズ史上最年少で上場を果たした。4月21日には時価総額が1000億円に達し、市場の注目を浴びたサイバーセキュリティクラウドの大野暉(おおの・ひかる)代表取締役社長である。

「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」というビジョンのもと、ウェブアプリケーションの情報セキュリティサービスをサブスクリプションで世界に提供している。

SaaS型セキュリティ市場において急成長中で、主力の「攻撃遮断くん」は累計導入社数、導入サイト数ともに国内No.1※。米アマゾンのクラウドサービスAWSに特化したセキュリティサービスも好調だ。
※出典:「クラウド型WAFサービス」に関する市場調査(2019年6月16日現在)<ESP総研調べ>(2019年5〜6月調査)

また米国シアトルにある子会社では、そのAWSマーケットプレイスで購入できる、WebアプリやAPIをネットの脅威から迅速に保護できる独自のルールセットを販売。世界60カ国超の1000以上のクライアントに恵まれている。

1990年生まれ。起業家は同世代にも少なくないが、いかにして彼はこの若さで「上場企業のプロ経営者」になったのか。波乱に富んだ過去と自身の原動力を明かす。



恩師との運命的な出会い


横浜で生まれ育った。中学3年の頃、運命のような出会いがあった。三木谷浩史氏とともに楽天を創業し基盤を構築、取締役副社長まで務めた後、教育の道へ転身した本城慎之介氏だ。

2005年に楽天を退社、公募により新設校である横浜市立東山田中学校の校長となった。同校に移籍し学級委員長を務めていた大野氏は、本城氏と1年間、学校づくりに携わることになった。

当時本城校長は32歳。国内公立学校の校長として最年少だった。これまでに見たことのない世界の大人が、目の前に現れた。企業に就職するのではなく、事業をつくり世の中に価値を生み出す経営者という生き方があるということを初めて知り、大いに影響を受けた。「人としての厚みが違う」と感じた。

高校受験の時期、選択肢はいくつかあった。決して裕福な家庭ではなかった。現実を鑑みると、「高校に行かずに消防士になる」「自衛官になる」という選択肢もあった。

自身の人生を大切にするよう、本城校長に諭されたのをきっかけに一念発起。念願の早稲田大学高等学院への進学が叶った。

学費のために、15歳で130万円の借金


15歳、学費のために周囲から借金を背負った。1年後には130万円に一定の利子をつけて返さなければいけなかった。生活が困窮する中、飲食チェーン店でアルバイトに励んだが、とても返済額には追いつかない。常に「飢え」を感じていた。

そんな時、先輩に誘われて家庭用品を手掛ける世界的消費財メーカーの広告づくりのグループインタビューに参加した。求められるままに、若者としての意見を提案した。

2時間で8000円。謝礼の額に驚いた。「なんで8000円ももらえるのですか?」と尋ねた。広告会社の担当者は、クライアント企業には巨額の予算があること、グループインタビューの意見を反映してマーケティングが成功すれば大きな売り上げが立つため、8000円の謝礼を払う価値があることを説明した。

これが社会なんだな、面白い! そう思った瞬間、思わずこう言っていた。「なんでも手伝わせてください」。それから若者向けの市場調査や商品企画、広告企画などの依頼を片っ端から受けた。

文=林亜季、写真=小田駿一

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