門奈:これは日本にも言えることですが「引続き外出すべきではないと考える層」「子どもの影響や何らか理由で外出せざるを得ない層」「空気を伺う層」の3層になっているんですね。「空気を伺う層」の多くは、SNSの投稿をみて外出しようと思った人が多そうです。
黄:なるほど…。あと旅行といえば、中国では「VR旅行」を始めるベンチャーも出てきていますよね。他にも外出自粛のタイミングで、ネットフリックスなどのストリーミングが伸びていたり。このあたりの娯楽は、旅行業界にとって脅威になるのでしょうか?
門奈:いえ、あまり影響はないですね。旅行はやはり「そこでしか味わえない体験に価値がある」ことが1番の強み。何かに完全に代替されることはないと思います。ただ、マクロ経済の影響を受けやすいので、今回のように想定外の想定外がくる時はつらい。マクロの影響を覚悟しつつ、いかに事業を一定リスクに抑えながら伸ばしていけるかが、旅行業界で生き残るうえでの鍵ですね。
コロナショックを機に、旅行業界はよりアップデートされる
黄:ここからは、イベントの視聴者からの質問に答えていきます。「中国人は日本人に比べて、団体旅行に参加するイメージがあるけど、コロナ後もこの傾向は続くと思いますか?」と来ていますが、門奈さんはどうお考えでしょうか。
門奈:そもそも団体旅行は、外国のルールや勝手がわからないときに、旅行会社が案内する意味で作るものでした。その点で日本は、すでに中国人にとって馴染みのある国。「団体旅行」のような伝統的な旅行の形態は、今回の不況によってどんどんと淘汰されていくように考えています。
黄:もう1つ。「インバウンドによって、化粧品業界でもダメージを受けているブランドがあると思いますが、中国現地にいながらも、日本の製品を使いたいという需要は引き続き残ると思いますが、そういうニーズは越境ECに移っていくのでしょうか?」
川崎:中国でも日本の製品は買えるので、中国国内で消費する人も多いと思いますが、一部越境ECに移っていく素地は十分あると思います。これまで日本から中国人の消費を狙う場合、主には越境ECとインバウンドの2つがあり、どちらかというとインバウンドの比重に重きを置く企業が多かったかと思います。しかし、これからは多くの企業で、インバウンド施策に向ける予定だった投資を、越境ECにシフトする動きが加速していくように感じています。
門奈:越境ECを扱ううえで、気をつける点はどのような点でしょうか。
川崎:越境ECの利用者を調査していると、その多くが「海外に行って買う顧客」と重なっています。つまり、海外のものを買うことに価値を感じている人達です。なので、もともと日本に来て化粧品を買っていた人々の中には、買う術がなくなって困っている人達もいます。この状態が続くと、他のブランドに移ってしまう人が出て来てしまう。
大手企業も、スピード感を持って越境ECをはじめ、チャネルの拡張踏み込むべきかもしれません。今日のテーマは旅行業界でしたが、コロナの影響で、多くの業界が、過渡期を迎えているなと実感しています。