EUの外相にあたるジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は10日、域外から欧州諸国への渡航制限を7月1日から段階的に解くよう加盟国に提案すると明らかにした。域外の人は近く、約4カ月ぶりに欧州で休暇を過ごせるようになる見通しだ。
EUはまもなく、EU市民が今夏、どこに渡航できて、どこに渡航できないかわかるウェブサイトを開設し、スマートフォン向けアプリの提供も始める。こうしたサービスが必要になったのは、域内の国境の再開の仕方が国によってばらばらだからだ。各国にそれぞれ訪問者の入国を認める国と認めない国があり、隔離のルールなども国によって違っている。
これまでの発表によれば、フランスやベルギーなど数カ国は6月15日に国境を再開する。だが、ベルギーがEU域内と英国からの訪問者すべてに国境を開くのに対して、フランスは英国からの訪問者には2週間の隔離を義務づける。
フランスがそうするのは、英国が8日からフランス人を含む入国者全員を対象に2週間の隔離措置を導入したことが理由。英国は新型コロナウイルスによる1日の死者数がEU加盟27カ国すべての合計よりも多くなっている。
EUはこれまで、EU市民以外の人の域外からの入域を拒否していたが、英国はEU離脱の移行期間の期限である今年末まではEU法が適用されるため、その例外となっている。
ベルギー人は再びEU内のほかの国へ移動できるようになるわけだが、その受け入れを拒む国も出てくるだろう。現時点で、ギリシャとマルタはベルギーからの入国を禁止している。
また、新型コロナウイルスの感染者数が多い英国とスウェーデンからの訪問者も、域内のほとんどの国が認めないだろう。しかし、スペインやイタリアなどは彼らを受け入れそうだ。
こういった状況では、欧州のどの国なら今夏、旅行に行ってもよさそうかを見極めるのは至難の業だ。
飛ばないフライトのチケットをつかまされる危険も
新型コロナウイルスをめぐる状況は時々刻々と変化しているので、かなり前に旅行の予約をするのも難しいだろう。その時点である国とある国の国境が開いていたとしても、8月の時点でそれがどうなっているかはわからない。第2波の到来によって、国境が再び封鎖されているかもしれない。
さらに、航空業界では、不正なチケット販売が横行しているらしい。旅行業界の情報サイト「スキフト」の調査によると、一部の航空会社は、株主には運航しないことを伝えているフライトのチケットを客に売り、その数日後、欠航になったと客に通知、返金は拒否して代わりにクーポン券を渡しているという。流動性の危機に対処するためなのだろうが、こうしたやり方はEU法にも違反している。