ビジネス

2020.06.22

訪日外国人99.9%減。コロナショック直撃の旅行業界の今後を考える

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疲弊する旅行業界、光明はあるのか?


:門奈さんは、日本国内における6月以降の旅行事情はどのように変化すると見ていますか?

門奈:国内で「経済を回そう」という機運が強くなれば、国内旅行は盛り上がると思っています。実際に、中国でも現在、空前絶後の国内旅行ブームが来ています。今まで、中国では全旅行市場における海外旅行分は4割を占めていました。富裕層の人たちの旅行先といえば、まず中国国内が候補として上がって来ていなかったんですよ。それらのアウトバウンドの分の消費が全て国内に入ってくる。その結果、国内の旅行産業の市場規模はコロナ以前よりも大きくなって来ています。

日本は、中国と比べて、旅行市場の海外旅行比率がそこまで高くなく、国内旅行の市場が元々大きかったことを鑑みると、中国ほどではないですが、国内旅行市場は今年の後半以降盛り返す可能性が高いですね。沖縄や北海道も良いだろうし、箱根や軽井沢といった観光地、さらに主要都市から近いニッチな郊外の観光地も盛り上がる気がしています。有名な観光地は、感染のリスクを恐れてあまり人が集まりにくいので分散しそうかなと。

:実際、国内の旅行業者は現在の状況をどのようにみているのでしょうか。

門奈:やはり、悲観的なひとが多いのではないかなと思います。国内旅行は多少盛り返すかもしれませんが、海外旅行客はしばらくは戻ってこないので、インバウンドが減って市場は縮小しますし、感染症の拡大によっては自粛も考えられるため状況は不安定なまま。いつ「勝負」を仕掛けていいか、それまで会社が体力的に持つかのチキンレースをしているような感覚です。

また、市場の縮小によって影響を受けるのが航空業界。固定費や変動費が大きい業界のため、コロナショックは致命的なダメージを与えていると言えるでしょう。市場の縮小と航空便の減少に繋がりますし、長期的な収益悪化になる可能性があります。


X Asiaの門奈剣平

:逆に、このコロナショックがもたらすチャンスはあるのでしょうか?

門奈:多くの会社が、国内旅行事業やインバウンドの事業を見直すタイミングに入っています。これから2〜3年、厳しい状態が続けば、淘汰されるサービスも多く出てくる。そんななか、ユーザーのインサイトを突いたサービスが生まれれば、一気に高いシェアを占めて拡大していけるのではないでしょうか。旅行業界の「再整理」が行われている今、チャンスはあると思います。

中国では「VR旅行」も出現


:ここからは、上海に住みbalconia Shanghaiというブランドコンサル会社の副代表をされている川崎訓(かわさき・さとし)さんにもお話をうかがっていきます。川崎さんから見て、いまの上海はどのような雰囲気でしょうか。

川崎訓(以下、川崎):コロナショックが落ち着いて、少しずつSNSで旅行をする人達の投稿が目立つようになってきましたね。個人的にはまだビクビクして、旅行は早いのかなぁと思っていたのですが(笑)。自粛期間が長かった分、大人よりお子さん達が我慢できずに外出した家庭も多かったのではないかという印象です。
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編集=新國翔大

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