アメリカのプラントベース食品市場の規模とその浸透度
ではプラントベース食品の市場規模はどのくらいなのか。また、一般消費者にとってどのくらい身近なものになっているのだろうか。
2020年3月に発表された最新のSPINS小売売上データを元に、The Good Food InstituteがまとめたPlant-based Food Market Overview(プラントベース食品市場概要)によると、プラントベース食品の売上は過去2年間で29%増加し、2019年に50億ドルに達した。
その主な内訳は、植物性ミルクが20億ドル、次いでヨーグルトやバター、アイスクリームなどの代替となる植物性乳製品が14億ドル、そしてプラントベースミートが10億ドルとなっている。
日本では、フードテック発の代替肉に関するニュースを目にすることが多いと思うが、実際には植物性乳製品も市場を大きく占めていることが分かる。
また食材としてスーパーでプラントベース食品が購入できるだけでなく、カフェ、レストランでもプラントベース食品をオーダーできる機会も多い。
日本でもスターバックスで豆乳・アーモンドミルクに加え、オーツ麦由来のオートミルクが期間限定で選択できたようだが、カリフォルニア州発祥のブルーボトルコーヒーでも、アーモンドミルク、またはオートミルクが選択でき、ナッツアレルギーを持つ人でも植物性ミルクが選択できる。
さらにファストフードチェーンでもプランドベース食品が食べられるようになっている。Impossible Foodsのパテを使用したハンバーガーは、バーガーキングをはじめとする多くのハンバーガーチェーンで食べられるということはかなり浸透してきた。
これに加え、Impossible Foodsの代替肉は、アメリカ全土に200店舗以上を展開するCheesecake Factoryというレストランのボロネーゼにも使用されている。
筆者も実際に食べてみたが、トマトソースの味もあり、見た目、食感ともにひき肉との差は全く感じなかった。Veg Newsより
このように、プラントベース食品はかなり身近なものになってきている。スーパーや馴染みのレストランで見つけることことができるため、日本と比べてもプラントベース食品に挑戦するハードルが低いのだ。
人々の意識:アメリカでなぜプラントベース食品が求められているのか
冒頭で述べたように、昨今の肉不足もあり、プラントベース食品の需要は高まっている。一方で、アメリカのユーザーの食の嗜好の変化にも需要拡大の理由があるという点も理解しておく必要がある。それが『フレキシタリアン』という食スタイルの台頭だ。
フレキシタリアンという言葉は「基本的にはベジタリアンだが、たまに肉を含めた動物食性食品を食べる人」と定義されている。2003年のワード・オブ・ザイヤー(アメリカ版新語・流行語大賞のような賞)で『最も便利な言葉部門』に選出されるなど、知名度もさらに高まっている。
プラントベース食品の認証組織であるPlant Based Foods Associationがまとめた2017年のレポートによると、アメリカ人の約3分の1がフレキシタリアンとのこと。
Plant Based Food Associationより
厳格なベジタリアンまたはヴィーガンがいまだ少数派であるのに対し、こうした「ゆるく楽しむ層」が徐々にメインストリームになりつつあるのだ。