キャリア・教育

2020.06.12 13:00

リファラル採用で失敗しないために。導入のステップと事例


リファラル採用の導入前に、メリットとデメリットを事前に知っておこう
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リファラル採用のメリットとデメリット


ここからは、より詳しくリファラル採用のメリットとデメリットについて解説する。

メリット


メリットは、先に挙げた注目される背景とも一部重複するが、大きくは以下の3つだ。

顕在化していない優秀な人材を見つけることに効果的


従来の採用活動では、転職エージェントや転職サイトを通じて、現在求職中の人材や転職意欲のある人材にしかアプローチすることができなかった。

しかしリファラル採用では、社員の個人的な繋がりを活用することにより、転職意思がなく転職マーケットにおいて顕在化していない優秀な人材に対しても、効果的にアプローチすることが可能になる。

マッチング度合いが高い


転職サイトの登録者とやりとりする場合、その採用候補者の人となりや実務能力、転職活動をしている理由(いわゆる「本音の部分」)など、見えづらい部分がどうしても存在する。それは転職エージェントを介したとしても、転職エージェント自身が候補者と長い付き合いでもない限り本質的には変わらないだろう。

その点リファラル採用では、人柄やスキルセット、いわゆる「本音の部分」について紹介者を介することで把握しやすくなる。そのため、マッチング度合いを高めやすい。

採用にかけていたコストを削減できる


上述のように、リファラル採用はコスト面のメリットも大きい。

特に、エージェントをリテイン(継続的に委託)して候補者を探す場合、経常的なコストが発生することもある。

リファラル採用は社内がその役割を果たすため、制度の設計の仕方によっては活動してくれる社員数も多くでき、かつインセンティブの額も社外に委託する金額と比べれば大きく抑えられていることがほとんどだ。

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デメリット


デメリットは事前に把握しておくことで十分対策可能なものが多い。そのため、「導入においての注意点」という捉え方をすると良いだろう。

採用する人材タイプの偏り


リファラル採用は人材のマッチング精度を高めやすい反面、人材のタイプが偏る傾向が強まる懸念がある。

組織とはさまざまな価値観やスキルを持った人の集合体だ。だからこそ個人や小人数ではなし得ない大きな仕事や新しい発想を生むことができる。

その意味では、ともすれば「似たもの同士」や「お友達」ばかりが集まる懸念があるリファラル採用への過度な依存は、組織力の強化に資さない可能性もないとはいえない。採用担当者は、リファラル採用を通じて獲得する人材にある程度の多様性が担保されているかどうか、目を配る必要がある。

紹介者からの誤った情報の伝達によるミスマッチの危険性


いくら社員の紹介・推薦とはいえ、正確な、あるいは企業側が伝えたい情報が伝達されているとは限らない。

「経営陣がどういう理念を持っているか」「今後会社をどうしていくつもりなのか」、さらに「どういった背景でどういった人材が求められているのか」といった話は、案外社員には浸透していなかったりもする。

リファラル採用を導入するにあたっては、まず社員が会社の現状や将来展望に対して統一した見解を持つことが欠かせない。そこが不揃いだと候補者も誤った情報で判断することになり、入社後のミスマッチを招きかねない。

社員の負担増


これまで採用は経営陣、人事担当者、および外部の専門家のみが担当し、社員は採用面接に駆り出される程度だった。しかしリファラル採用が活発化すると、採用業務という“新たな負荷”が否応なしに増えてしまうリスクもある。

働き方改革が叫ばれる中、貴重な既存戦力をいかに有効活用するかは重要なマネジメント課題であり、ただ闇雲に社員を採用活動に駆り出すことは避けるべきだ。

リファラル採用を「貴重な社内リソースを割くに値するもの」としてワークさせるには、しっかりとした制度設計や社内広報などの下準備が必要になる。

紹介者と被紹介者の間でのプライベートな問題の発生


そのほかの懸念点として、紹介者と被紹介者間でのトラブルがあげられる。

例えば、被紹介者が不採用や内定辞退となってしまった場合、二人の人間関係に悪影響を与えることもあり得る。また無事に採用となっても、入社後のミスマッチなどが起きると、その二人の友人としての関係性に影響を及ぼす可能性がある。

こうしたケースは毎回起きるわけではないが、一度でも結果的に紹介者のパフォーマンスが落ちたり、制度そのものが形骸化や崩壊したりすることにも繋がりかねない。そのため、採用担当者は紹介してくれた社員へのケアも視野に入れておくことが重要だ。
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文=小野祐紀

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