国連の専門機関、ICAO(国際民間航空機関)は2020年の国際線旅客は、前年に比べ約22億人〜29億人減り、供給座席は40%から53%減少するとの航空客予測を試算した(6月1日発表時点)。さらに事態が収束した後も、国際線の需要回復が2019年の水準まで回復するのは2024年以降、国内線では2022年になるとの見方もでており、空の便を用いた観光産業の回復にはかなり厳しい道のりが予想される。
「先行きは見えない」航空会社内部の声
4月のヴァージン・オーストラリアの倒産に次ぎ、タイ国際航空などこれまで3社の大手航空会社が事実上の経営破綻に追い込まれた。
ANAホールディングスは国内外の路線数や所有する航空機の機体数、そしてJALグループと比べて1万人ほど多いとされる従業員数のため支出が多く、2019年12月末時点で3901億円だった手元資金が、2020年3月期連結決算では2386億円にまで減少した。JALでも旅客数、輸送規模数値ともに東日本大震災以来の2桁の減少率を記録するなど、厳しい経営状況となっている。
先行きの見えない航空業界で従業員はどのような思いを抱えているのだろうか。国内大手航空会社に勤める20代パイロットの男性に話を聞いた。
「新型コロナが発生してから現在までの航空会社や、会社に勤める人の様子を見ていて、不満はなさそうですが、社員の一時帰休や新規採用の一時中止などをしているのを見て、大丈夫かな? と思った人は多いはずです。ただ、借り入れした金額が手元にあるため目下大きな影響はないとの説明が経営側からあり、雇用は守られていると安心している人が多いように感じます。しかし先行きは全く見えず、業界再編で45/47体制の頃のように国主導で航空業界が動く仕組みに変わっても驚きません」
45/47体制とは、戦後日本の航空業界に敷かれていた体制で、例えば日本航空は国際線のみ、全日空は国内線のみ、というように航空会社ごとに運航路線が国から割り当てられるシステムのことをいう。航空産業の成長や、他国との競争を視野に入れた際に不利益が生じることなどが再考され、1985年に体制の抜本的見直しが行われた。
一方で、航空便需要の回復が短期間では望めないことにより、仕事内容に変化が生じてくるのではないか。現時点でも減便に伴う社員配置に新しい体制が取られているというが、そういった業界内の変化については、「新型コロナ以前から常にイベントリスクや技術革新に左右され、10年先が予測できないと言われる業界なので、様式の変化が生まれることに対しての抵抗はあまりありません。大きなビジョンで見るとまたいろいろ変わるんだなくらいにしか思っていないのが正直なところです」と明かす。