ビジネス

2020.06.08

一時停止を経て、サービス再開。「傘のシェア」が大幅アップデートに込めた思い

アイカサ

年間約8000万本──これは国内におけるビニール傘の年間消費本数だ。

ビニール傘は安価ですぐ手に入る。しかし、強度が低く、分解が難しいためリサイクルへのハードルが高い。「ビニール傘の消費量第1位でもある日本がこの問題に取り組むべき」として2018年12月に誕生したのが、傘のシェアリングサービス「アイカサ」だ。

アイカサでは、まずLINEで友だち追加するところからスタート。傘立て「アイカサスポット」に設置されている傘のQRコードを読み取り、ロック解除に必要なパスワードを表示。入力後、傘を使える仕組みになっている。

レンタル額は1日70円。続けて利用しても、6日以降からは最大420円で使い放題となる。また、月額280円の使い放題プランもあるなど、コンビニでビニール傘を購入するよりはるかに安く傘を利用できるのだ。



アイカサはリリース後、東京・渋谷を中心にサービスを展開。2019年6月には、JR東日本スタートアップ、三井住友海上キャピタルから総額3000万円の資金調達を実施した。これを機に、東京・上野駅や御徒町駅で実証実験も開始。2020年5月時点のスポット数は約850箇所、登録ユーザー数は9万人超えと、着実な成長を見せていた。

そんなアイカサを運営するNature Innovation Groupが2020年5月に発表したのは「サービスの大幅アップデート」。約1カ月ほどのサービス一時休止を経て、6月8日、新たなかたちで再スタートを切った。梅雨入り目前での大胆な経営判断の裏側を、代表の丸川照司に聞いた。

駅でのニーズが圧倒的に多かった


「駅構内のコンビニが立ち退くとき、来店客から最も多く寄せられるのが『タバコや傘を買えなくなるから困る』です」

駅から出ると、外は大雨。いつもバッグに入れているはずの折りたたみ傘はなく、あるのは、駅構内のコンビニで売られているビニール傘…なんてよくあるシチュエーション。そう考えると、駅のコンビニへのニーズも「傘」が上位にあることは理解できる。

「最初は、傘がないと困る瞬間は街なかにあると考えていました。実際に運営してみたところ、駅で使いたいニーズが圧倒的に多かった。もっと駅でスムーズに借りてもらう方法はないかと考えていたところ、行き着いたのがソフトとハード両面からのアップデートでした」
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文=福岡夏樹

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