ビジネス

2020.06.08

一時停止を経て、サービス再開。「傘のシェア」が大幅アップデートに込めた思い

アイカサ


当初はLINEで友だちになれば使い始められる手軽さがサービスの特徴だったが、ダイアル傘をなくしてもっと簡単にレンタルできるようにすべく「アプリ化」へ舵を切ったという。

「最近ではLINE関連サービスが増えていますが、当初はまだ少なく、具体的にどう使えばいいのかわからないユーザーの方が多かったんです。一方で『アイカサのアプリを見つけられなかった』と言われていました。他にもいくつか使えないネイティブ機能があり、利便性を向上するために今回のアップデートでネイティブアプリを用意しました。今回のアップデートではiOSとAndroidの両方を用意。QRコードもしくはNFCを使えば、ダイヤルを回す手間なく傘を利用できるようになっています」



ハード面では、傘・レインウェアメーカーのサエラと提携。同社が展開する“壊れても部品交換できるビニール傘”である「+TIC」を導入し、半永久的に使い続けられるものへと進化させた。

スポットのIoT化でメンテナンスコストを大幅に削減


サービスの刷新によって、アイカサが狙ったのはUX(ユーザーエクスペリエンス)向上だけではない。今回のアップデートではアイカサスポットをIoT化。RFIDタグによってレンタル傘の情報をリアルタムで取得し、在庫管理も可能になった。

これまでアイカサは「返却率はほぼ100%」としつつも、レンタル傘以外の傘がスポットに放置されたり、登録していないユーザーが傘を持っていったりなど、メンテナンスコストに頭を抱えていた。今後は、レンタル傘以外のものが入らないようになるほか、降雨量の違いからスポットごとに最適な本数を用意できるようになったのだ。



「アイカサは以前から、気象庁などの天気予報の情報を毎回確認していました。今後はその情報に基づき、雨が降りそうになるとプッシュ機能で最寄りのアイカサスポットへ案内できるようにしていこうと思っています。また、アイカサスポットをIoT化することで、過不足に応じて傘を補充し『傘がない』状態を回避。これによって、これまでのメンテナンスコストを半分以下にできると見込んでいます」

傘を使いそうなスポットはデータがなくてもわかるのでは?と侮るなかれ。同じ駅でも、出口によって傘のニーズが異なることは丸川自身が体感していた。

「当初、東京駅の丸の内口は、地下街があるため傘は必要ないと言われていました。『どちらかというと、八重洲口のほうが傘を必要としている人が多いのでは?』と予想していたんです。しかし、実際にやってみると、丸の内口のほうが傘の利用率が高かった。

これまでは、そういった認識を点と点でつなげていました。アップデート後はよりわかりやすくして『こんなニーズがある』『雨の降り方がこうなるとどうか?』などを明確にしていきたいと思っています」
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文=福岡夏樹

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