また、新型コロナウイルスの感染拡大によって外出を控える人が世界規模で増える中、物語を読んでもらうために、辻村深月、恩田陸、浅田次郎、湊かなえはじめ100人の作家が日替わりで小説やエッセーを執筆する講談社の連載企画「Day to Day」(文芸サイト「TREE」で公開中)が5月から始まったが、近谷はこれらの作品の英語版制作総指揮を務めている。
近谷氏に、アマゾン・パブリッシングの隆盛に代表される国際出版業界の「今」について、そして日本での読者市場が狭まるなか、アジア発のコンテンツの世界規模での展開を目指す理由について、寄稿していただいた。
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アマゾンも「翻訳書専門レーベル」設立
先日の第92回アカデミー賞で韓国の「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)が、外国語映画として史上初の作品賞を受賞した。実はいま、アメリカでは映画業界のみならず、出版業界でも「ダイバーシティ(多様性)」が大きなうねりとなり、変化が起きている。
たとえば、エスニックマイノリティや性的マイノリティ、環境問題等を扱った本がここ数年一気に増えてきた。こういった多様性を受け入れる動きは、日本を含めた世界の国・地域にも徐々に浸透していくことになるだろう。
2009年には、アマゾン・パブリッシング(アマゾン・ドット・コムの書籍出版部門)から翻訳書を専門とするレーベル「AmazonCrossing」が設立された。
このAmazonCrossingは、さまざまな国や地域から厳選した文学を年間100点近く英訳出版しており、全米最大の翻訳専門の出版社に成長した。かつて、「翻訳書が存在しないのは北朝鮮とアメリカだけ」などと皮肉られてきた「文化的内向き志向」のアメリカで、自国以外の作品に真剣な眼差しを向けた出版事業が確実に成長していることに、時代の変化を感じる。