在宅ワークや海外転職も。定年退職後に悩むシニアのキャリアの生かし方

定年退職後、60代からのキャリアの切り開き方を模索したい。 (Shutterstock)


特に高度な資格や技術を持たない人の場合、ビル・マンション管理、ガス設備保安・メンテナンス、警備、梱包、清掃、バス送迎、接客、販売、調理補助などの職種に限られる。単純作業で手仕事が多い。給与は時給1500円以下、月給では20万円以下だ。

ただし、例外もあり、「主任技術者免許保有者」の資格があることを条件に、電気設備トラブル対応の求人がある。待遇は契約社員で月給50万円と高給だ。また、大阪市内のある建築会社は「建築現場の現場監督」を60歳以上のシニア歓迎として募集している。待遇は正社員で、月給は能力と経験次第で36~55万円。

60歳以上の女性の再就職はさらに厳しく、職種がかなり限られてしまう。清掃、販売、介護、調理補助、梱包、販売、病院内での事務補助などだ。ただし、薬剤師など資格があり経験もある人については応募の道が開かれている。 

転職成功の秘訣は、新職場の一員になりきる


就職の条件が不利でも家庭の事情から働かざるをえない場合もある。新しい職場で社員とうまくつきあい、長く働くためには、どのような心構えが必要なのだろう。シニア専門人材会社でコンサルタントをしていた生島一朗氏は再就職に成功するポイントについて次のようにアドバイスする。

「一番難しいのが大企業の事務職を退職した人ですね」。自身も大企業からの転職組の一人で、「以前なら相手から挨拶してくれたが、これからは自分の方から挨拶するようにしたい。オフィスの整理や清掃などは自分の仕事ではないと考えないで社員と一緒にやることですね。この一緒になってやるという姿勢が大切なのですよ」と強調する。

つまり協同作業を通じて自分も職場の一員だという自覚をもつ、周囲からもそんな自分を感じてもらうことがうまくいく秘訣だというのだ。

自由に働く環境をつくれる在宅ワーク


しかし、長年、企業の事務部門や営業部門でバリバリ頑張ってきた人の中には「シニア向けの仕事では働くモチベーションが上がらない、過去の経験を活かせる仕事はないものか」と考え悩む。希望するポジションがあっても年齢を理由に断られることもよくある。

それでは、いっそのこと自らが経営者となって事業を創出できれば、と考える人もいるだろう。だが、実際に起業となると、オフィス賃貸料や人の雇用などまとまった初期投資が必要だ。また、会社経営は初めてという人がほとんどだろうから、起業後は波乱続きが予想される。
次ページ > 在宅ワークという選択肢

文=廣田壽子

ForbesBrandVoice

人気記事