上海など日系企業の進出が活発な都市では、財務経理、営業などの分野でも日本人を求めている企業や学校がある。日系大手人材会社では、「日系企業の取引先はやはり日系企業が多いので、営業は日本人を希望するところが多い。日本語を話す現地スタッフはいるが、「あうん」の呼吸は日本人同士でないと伝わりにくく、日本人のビジネスマナーも高い評価を受けています」と話す。
また、中国では日本語を学ぶ学生が海外で一番多い(約100万人、外務省2018年度統計より)ことから、日本語教師の需要もある。という筆者も上海の大学で日本語教師をした経験をもつ。日本のマスコミ企業で働いた後、55歳で上海へ。上海復旦大学で中国語を学び、現地で就職活動を開始し、日本語教師の職を得た。就職活動を通じて感じたことは、中国はその人の実力を重視するところが大きく、能力があり、やる気がある人に対しては、年齢や男女の性別に関係なく、就職の道が開かれることだ。
ただし、上海での生活費は高く、中でも大きなウェイトを占めるのが住居費だ。中国の経済成長に伴い家賃の上昇率が大きい。筆者も2011年から数年間、長寧区(中心部)の中国人住宅に家を借りていたが、2011年当初の家賃は東京の6~7割程度だったが、その後毎年の契約毎に20%増で高騰していった。
食費についてはどこで食材を購入し、食べるかによって開きが大きい。地元の中級食堂は安いが、日系企業が集まる長寧区の日系スーパーや日本食レストランは高い。1回に使うお金は地元の場合1人40元(600円)前後で済むが、日系企業が集まる地区にある日本料理店では200元(3000円)以上はする。当時心がけていたことは、中国系スーパーか商店で食材を購入し自炊することと高級な日本料理店に行く回数を控えることだった。
つまり、海外で上手に暮らす秘訣は、地元でおいしく新鮮で安い食材を売る店を探して利用することで、それは現地の人々とのコミュニケーションの好機ともなる。
既成概念にとらわれない就職活動
定年退職後も働きたいという人の心情を鑑みると、経済的必要性に加えて、知識や経験を活かして働きたいと考えているようだ。残念ながら、日本の労働市場は60歳を過ぎたシニアに厳しく、シニアが活躍する場が少ない。
一方、海外では日本の技術力や日本のビジネスマナーに熱い視線が注がれていることから、日本人シニアへの引きもあり、キャリアを活かすチャンスである。
日本で就職活動をするとき忘れてはならないのが人材会社のサイトでは入力項目に上がってこない部分があることだ。その一つが「人脈」だ。人脈はその人の財産というべきもので、「信頼できる人」という太鼓判を押されて入社を望まれた、共同事業者としての誘いを受けた、という例もある。
人生100年時代。60歳は第二の人生のスタート地点だ。自分が社会の中で活かされているという自覚をもって楽しく働く方法を模索したい。