ビジネス

2020.04.30

日本発のビジネスモデルをどう現地化させたのか クラウド名刺管理サービス「Sansan」の海外戦略

Sansan人事部兼Sansan Global 福田一紀(写真右)と吉田健太朗(左)(撮影:原哲也)


──国が変われば、単に言語が違うだけでなく、名刺での企業名や住所の表記方法も大きく変わりますからね。

ほかにも、営業に際して「コンセプトを理解してもらう」という難しさもあります。先ほど市場を創出していくと言いましたが、日本の場合は「社員が業務上で知り得たことは会社の財産」であるとの考え方が比較的受け入れられやすいのですが、海外では営業先の担当者に対して「人脈を社内で共有しましょう」と提案しても、「人脈は個人のものだ」と跳ね返されてしまうことが少なくありません。

──確かに会社への帰属意識は日本ほど強くないイメージがありますね。海外ではそのような反応になるのも当然かもしれません。

海外では日本より「個人プレー」の要素が強くなってきます。なので、「社内で共有する」という日本的な考え方を理解してもらうには、経営者層としっかり話をして、「人脈を共有することが営業力強化に繋がる」というベネフィットを理解してもらえるかどうかがひとつのポイントとなります。シンガポールでもSansanを利用していただけるローカルの企業が増えてきているので、この考え方が浸透し始めていると、手応えは感じています。

日本発のビジネスモデルをローカライズ


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──そういう意味では、「日本発」のビジネスモデルなのですね。シンガポールの現地社員の採用も福田さんが担当されているのですか?

はい。採用に携わっていて思うのですが、現地採用の社員は自分たちのキャリアパスをしっかりと考えています。「目の前の仕事が自分の成長につながるのかどうか」を意識していることを強く感じさせられます。そして優秀なメンバーに残ってもらうために、会社としてもキャリアパスや企業制度含め、組織力を高めるための努力が自ずと求められてきます。意識の高いローカルの社員の存在が、会社との間で良い相互作用を生み出していると言えます。

──現地にローカルの社員がいることは本当に大事ですね。グローバルビジネスにおいては、自社と顧客企業のローカル担当者同士が意思疎通を図って、話がまとまる部分が多いので。

そうですね、ローカルの担当者同士で、WhatsApp(メッセンジャーアプリ)で話を進めているところなどは、なかなか日本人には入り込めないところではありますね。

Sansanの事業は、「日本発」のビジネスモデルであると先ほど話がありましたが、シンガポールでも「日本ではこうやってきたから」というマインドセットから抜け出せずに、営業結果が思うように出せない時期もありました。

最初は日本人だけで試行錯誤していたのですが、あとから加わった現地ローカルの社員が、顧客からのフィードバックも踏まえ、「ここは改善した方が良い」などの意見を出してくれて、提案方法やサービスのクオリティーが向上していきました。

ビジネスモデルは「日本発」でも、ローカライズさせる際には現地のことがわかるローカルの社員が要になることが、私たちが得た学びでもあります。
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文=吉田健太朗 写真=原 哲也

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