日本の自治体DXはどうなる? 中国・海南省ではAI行政端末機を設置

goffkein.pro / Shutterstock.com

自治体における行政業務プロセスのデジタルトランスフォーメーション(DX)は、日本でも議論が始まった大きな社会テーマのひとつだ。わかりやすいところでいうと文書の電子化(ペーパーレス化)が挙げられるが、総務省が主管する研究会の資料などをみると、人工知能(AI)やロボティクス、RPA、IoT、ブロックチェーン、5Gなど最新技術を複合的に活用して、さらに高次の「スマート自治体」(自治体DX)を目指すべきという意見も散見される。

これまで行政業務プロセスのDXと関連して言及・評価されることが多かったのは、エストニアの事例だ。同国では国民ID番号が付与され、申請手続はネット上に集約されている。総務省資料によれば、「国民は約3000にのぼるサービスを利用できるようになっている」という。

そんななか、中国ではより思い切った試みも始まっている。今回、海南省では省内350カ所に顔認識技術を実装した「AI行政端末機」が設置された。利用できるのは、各行政機関や役場、警察署、銀国、薬局、住民センターなど。住民がAI行政端末機を通じて顔を認証すると、「身元承認」が完了し、各証明書の発給や罰金の納付など行政サービス、またローン額の照会などの金融サービスが受けられる。

海南省は人口930万人で、面積は香港のおよそ30倍。「中国のハワイ」と呼ばれ中国政府も開発に力を注いでいるが、今回のAI行政端末機の設置は都市全体のスマート化を実現するためのひとつの施策だという。なお海南省では、2020年末から約200の行政業務を処理できる「24時間仮想サービスホール」も運用開始する計画だという。

総務省の資料などをみると、行政業務プロセスのDXは最新技術にフォーカスを当てるのが目的ではなく、あくまで「利便性」「透明性」「コスト削減」などを追求すべきとの意見がある。

また、サービスを使う側の情報処理能力も考慮しなければならない。例えば、行政サービスがデジタル化されたとしても、利用方法が複雑であればデジタルリテラシーがない住民は使い方が分からず右往左往するハメになる。端末の横にサポートする人がつきっきりでリソースを割くとなれば、いささか本末転倒だ。

その点、顔認証技術と行政業務の連動は、分かりやすいと言えば分かりやすい。カメラで顔を撮影するだけで済むからだ。もちろん、プライバシーの問題や他のビッグデータとの連携など、日本と中国では一緒くたに語れない点が多い。それでも、煩雑な申請作業が「ぱっぱと終わる都市に住みたい」という需要は、どの国の国民にとって共通したものであるはずだ。

日本の自治体DXがどのようにデザインされていくか。新型コロナウイルスの影響もあり、社会のそこかしこでDXが至上命題となる昨今、併せて注目していきたいイシューだ。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>

文=河 鐘基

ForbesBrandVoice

人気記事