経済・社会

2020.04.10 07:00

これから来る危機「日本人が真剣にとるべき行動」


──あなたは日本の問題点として、巨額の国債発行残高や女性の役割、少子高齢化、移民政策、中国・韓国との歴史問題、天然資源管理問題を挙げています。どの問題が最も深刻だと思いますか。

まるで、幸せな結婚を維持するには何が最大の問題になりうるかと聞かれているようだ。幸せな結婚生活を送るには、お金や子供など、多くのことについて夫婦間の合意が必要である。日本も同じだ。例えば、女性の役割が改善されなければ、他の問題が片付いても、大きな問題が残ったままだ。

──今後、世界が直面する危機を乗り越えるには、国家として、個人として、何を重視すべきですか。

「個人的・国家的危機の帰結を左右する要因」12項目が、その答えだ。危機に陥っていることを率直に認め、行動を起こすことへの責任を認識し、周りから支援を受けることが大切だ。

日本という国が特に考えるべき問題は、女性の役割と移民問題だろう。育児休暇など、女性に関する政策は進歩しているが、男女平等とは程遠い。次に移民だが、日本も米国のようにすべきだと言っているわけではない。それは日本が決めるべき問題だ。ただ、移民を増やさないのなら、女性の活用や、米国のように、一部の職業を除き定年制を廃止するなど、別の解決策が要る。

だが、日本はこうした危機を乗り越えられると思っている。1853年の黒船来航による開国後、(鎖国から近代国家への転換を図り)困難な危機を見事に乗り越えた歴史が日本にはあるからだ。世界一の識字率や高い教育レベルも強みだ。私は、たぶん日本人よりも日本の将来を楽観視している。


ジャレド・ダイアモンド◎1937年、ボストン生まれ。ハーバード大学で生物学、ケンブリッジ大学で生理学を修める。研究領域は進化生物学、鳥類学、人類生態学へと発展。カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部生理学教授を経て、同校地理学教授。マッカーサー・フェローなど受賞多数。

インタビュー=肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN 5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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