AI通信「こんなとこにも人工知能」

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今年1月、テンセントのAI記者「ドリームライター」が作成した文章を、上海盈訊科技有限公司が盗用したとして裁判が行われ、中国・南山区人民裁判所はテンセントの主張を認めた。その後、上海盈訊科技有限公司が控訴を放棄し、テンセント側の勝訴が確定した。人工知能(AI)が作成した文章の著作権を認める初の判例の登場である。

今回の訴訟の争点は、テンセントが開発したAIソフトウェアに著作権を認めるか否かであった。テンセントは2015年にドリームライターを開発。2018年8月20日に、上海株式市場に関する分析記事を書くと、上海盈訊科技有限公司はこれを自社のウェブサイトに掲載した。そのため、テンセントは著作権を侵害されたとして訴訟を起こしていた。

テンセントは記事について、リアルタイムの株価データを使用し、AIソフトウェアを使用することで特有の表現形式および文章構造で同文章を誕生させたと説明。自社編集チーム、商品チーム、技術開発チームなどが作り上げたものとして著作権を主張した。

それに対して裁判所は、同文章がテキスト作品として形式要求に合致し、当日の株式市場記事を作成する過程で、データの選択、分析、判断、テキストの合理性、表現の明確性において「独創性」を持っていると判断した。つまり、データを入力しAIが出力したものであるが、特定の形式を獲得するための知的活動が含まれ、それが認められたということになる。

AIの圧倒的な製作スピード


AIが生み出したコンテンツの著作権を認めた同判決は、少なくとも中国のAI産業、ひいてはクリエイターやアーティストに大きな波紋を広げると思われる。

まず、AIは圧倒的なスピードで多くのコンテンツを制作できるが、人間はそのスピードには到底敵わない。また、AIは人間が生み出したコンテンツを改変したり、学習することで、“斬新にみえるコンテンツ”を生みだすが、その際に利用された“元データ”の権利はどうなるかなど、今後、さまざまな問題が露呈することが確実だからだ。

AIさえ開発できれば、テキストにしろ、音楽にしろ、絵画にしろ、写真にしろ、個人や一部の企業が一日で数万~数十万の創作物を生み出すことさえ技術的にはすでに可能だ。法的な根拠まで揃ってしまったとなれば「クリエイティブの独占」が生まれてしまう危険性がある。

中国の法律系メディアでは、今回の判例が人々にAIを利用した創作を促し、AI産業全体の肯定的な発展や利益になると評価しているが、日本を含め、欧米諸国では今後どのような事例や判例が生まれるのだろうか。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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