そこは「心地よく生き、美味しく食べる」ことそのものといっていい場所。本国イタリアのみならず広く世界における代表例といえる場所だ。そこでは建築的な価値、上質なもてなし、イタリア料理としての最高の表現といった条件が、景観の美しさと融けあっている。いわば奇跡的な化学変化が生ぜしめた空間なのだ。
そんな化学変化が起きた場所、それは、ブレッシャ県エルブスコにあるイゼオ湖の南、フランチャコルタ地方に広がる丘陵。
シャトーホテル「ラルベレータ ルレ・エ・シャトー」はそこにある。ミラノからたかだか70キロに、心身ともに遥か遠くへ誘う異空間が存在するのだ。
この「奇跡」の立役者は、「テッラ・モレッティ・リゾート」経営者のカルメン・モレッティとその夫、マルティーノ・デ・ローザだ。カルメンには、父ヴィットリオとともにこの空間を立ち上げるのに必要だった「ひらめき」があり、マルティーノ・デ・ローザには経営・管理、渉外の才覚がある。
そう、このマルティーノ・デ・ローザこそが、シャトーホテル「ラルベレータ ルレ・エ・シャトー(以下、ラルベレータ)」に新しい刺激やアイデアを取り込む存在だ。季節ごとに新しい要素で変化をつけはするが、「ラルベレータ」の根底にあるものは常に変わらない。そして、その揺るぎなさこそが「ラルベレータ」の核となる部分だ。
シェフにはアラン・デュカス、エンリコ・バルトリーニも
マルティーノは、アット・カルメン社でホテル・レストランの事業形態づくりにも関わっているが、その一例として、マレンマ地方(トスカーナ州南部)の姉妹店「アンダーナ」がある。そこでマルティーノはマネージャーとして、フランス料理界の巨匠、アラン・デュカスや、ミシュラン星つきレストランを複数経営する若手天才シェフエンリコ・バルトリーニを迎え、「ラルベレータ」にピザ職人フランコ・ペペを迎えるなど、世界が注目するビジネスモデルを数多く生み出している。
数年前、この業界で「冒険」を始めたばかりの頃のマルティーノは、イタリア美食界の権威、ルイージ・ヴェロネッリから「ワインを作ってレストランを経営するというのは、職業じゃなくてひとつの生き方だ」と言われた。
まさにマルティーノは、この「仕事は生き方」を体現するために生まれてきたような人だ。話していると、相手をすぐに居心地よくさせる才能が垣間見えるし、いつも、意表を突くようなことを提案して相手をあっと言わせたがっている。と思うと、すばやく経営者の顔に戻って仕事に邁進する。目の前の仕事に集中しながら、遥か先も見据えている。おそらく海外のマーケットも。
「現在、市場には、はっきりとしたロジックが出来つつあります」と、マルティーノは言う。