給与は、職場での苦しみの対価?
しつけは恐怖でしかできない、という考え方は浸透していると感じる。それは日本の職場でも広く浸透していそうだ。
例えば、私が「仕事は楽しくやるものだ」という話をセミナーですると、多くの経営者や管理職に「それでは社員を管理できない」「理想論すぎる」「きれいごとだ」という話を多くいただく。
仕事というのは辛く苦しいものであり、給料を稼ぐことはその苦しみの“対価”だと考えている人は非常に多い。そうしたこともあり、日本では自分の会社に対するロイヤリティ(愛着・忠誠心)は世界で最も低い。
また、未来に期待する気持ちも非常に低い。そして、それは現代の青少年の意識に酷似している。彼らは世界の中で最も自分に自信がなく、未来に希望を持っていないのだ。
私は、「仕事というのは、ストレスと時間をお金に変えること」という考えが日本の長期停滞と関連している、と言い続けてきた。がんばっても未来が開けないと思えば、人はがんばらないし、より貯金をして安いものを買うという行動に走るだろう。
日本がデフレ経済を続けているのは、このネガティブな思想が蔓延しているからだ。そして、それは子ども時代の家庭における体罰から始まっている可能性がある。6割近くの人が“体罰容認派”であるということは、6割近くの子どもが日常的な体罰を何らかの形で受けている可能性を示すからだ。
暴力と恐怖が支配している中では、決して未来に対する希望を育むことはできない。日本再生の道のりは長いが、まずは体罰を容認しない社会を真剣に目指すことから始めるべきなのではないか。
チャート出典:公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン編「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書『子どもの体やこころを傷つける 罰のない社会を目指して』」 意識調査:2017年7月10日~2017年7月13日 実態調査:2017年7月11日~2017年7月12日 調査主体:公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 協力:認定NPO法人 児童虐待防止全国ネットワーク、NPO法人 子どもすこやかサポートネット
連載:カリスマファンドマネージャー藤野英人の「投資の作法」
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