その後、ロビンスはTVプロデューサーのジョー・ダボラと共に、子供向けユーチューブ番組を製作するAwesomenessTVを2012年に設立。その翌年にドリームワークスのアニメ部門に3300万ドルで売却していた。
さらにその後、バイアコムがAwesomenessTVを買収し、ロビンスに再び同社の経営を任せることになった。バイアコムCEOのバキッシュは2018年10月に、ニコロデオンの復活の任務をロビンスに与えた。彼はロビンスが持つデジタル世代の知見に惚れ込んだのだ。
ロビンスがその手始めに行ったのが、当時まだ4歳だったユーチューブスターのライアン・カジをTV番組に起用することだった。「バキッシュからの依頼を受けて、真っ先に頭に浮かんだのが、カジのことだった」とロビンスは話す。
彼は「スポンジ・ボブ」の製作を手掛けたチームと共に、6週間で番組のパイロット版を仕上げ、初回の20エピソードの製作を決定した。2019年4月に「Ryan’s Mystery Playdate」のオンエアが始まると、瞬く間に児童向け番組のランキングで首位に駆け上がり、初週で550万人の視聴者を獲得した。
視聴者の4割は、初めてニコロデオンの番組にふれる顧客だったという。ロビンスはただちにシーズン2の製作を開始した。
配信プラットフォームの多角化
MTVネットワークスの元CEOで、バイアコムのケーブルネットワーク部門を率いた経歴持つジュディー・マグラスは「ブライアン・ロビンスはインターネットのインフルエンサーが、伝統的TV業界で果たす役割を熟知している」と述べる。「ライアンの番組を成功させたロビンスは、新たな顧客をニコロデオンに招き入れた」
しかし、ロビンスもニコロデオンの未来を全く楽観視している訳ではない。キッズ向け番組でヒットを飛ばしても、既にケーブルTVから離れた顧客にリーチすることは難しい。
ニコロデオンは新たな戦略として、ネットフリックス向けに「スポンジ・ボブ」のスピンオフ版を製作し、その映画版をパラマウント配給で今年5月に公開する。さらに、今年後半には他社のストリーミングプラットフォーム経由で、3万エピソードの番組を配信する。
ユーチューブに開設したニコロデオンのチャンネルは、既に1860万人の購読者を抱え、ライブイベントの開催に向けて準備を進めている。
「ニコロデオンのブランドは、プラットフォームを問わず生き残る。この業界で大事なのは番組を作るだけではなく、ブランドを維持し、消費者が居る場所にコンテンツを届けていくことだ」とロビンスは話した。