0歳からの「お金の話」

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金融教育の授業で、お金をテーマに自由に議論をすると、「お金がいっぱいあったら何をするか」という話題で盛り上がることが多い。一方で、「お金がないとどうなるか」という話題を振ると、「住む場所に困る」とか、「餓死してしまう」といった、極端にお金がない貧困状態を口にする人が多い。

しかし、実際にそこまでの貧しい状態に陥らずとも、お金に余裕がないことで起こる困り事はたくさんあり、本来は、それをしっかりと認識しておかないといけない。今回は、お金がないことで起こるさまざまなことについて述べてみたい。

選択ができることの重要性


わが家では、子どもたちが買い物をする際に、「これを買うということは、他に買えるものや、買わずにお金を貯めておけばもう少しで買えたものを諦めることだよ」ということを意識させている。

筆者は、2018年6月に、金融教育ベンチャーのマネネを創業して以降、多くの親たちと話をしてきたが、子どもにお小遣いやお年玉をあげる際、「無駄遣いしてはダメだよ」と言って、無意識のうちに貯めることが善で、使うことを悪とするような言い方をする人が非常に多いと感じている。

本来であれば、子どもがお金をもらった時には「貯める」か「使う」という選択肢があり、どちらが正しいということはなく、自分のなかで最適だと思う選択をすることが重要だと教えることがよいという考えを、筆者は持っている。

つまり、何かを選択するときは、同時に何かを諦めているということ。これを「機会費用」というが、この感覚を、幼少期から身につけさせることが、金融教育には重要だ。

お金がないことで起こることの1つが、この「選択」ができなくなることだ。たとえば、スーパーへ買い物に行ったとき、同じ品目でも種類によって価格差があることがほとんどだろう。1パック200円のイチゴもあれば、1パック600円のものもある。

当然、この価格差は美味しさや大きさ、数などに対応している訳だが、お金がないといちばん安いものしか買うことができない。または、買わないという選択しかできなくなる。

実は、お金がないことで起こることの1つに、この選択ができないという現象があり、これが人間に非常に強いストレスを与えてしまうのだ。

お金がないことで思考力が低下


お金がないことで選択ができなくなり、非常に強いストレスを受けると書いたが、それ以外にも思考力も低下するということが実証されている。

ハーバード大学のセンディル・ムッライナタン経済学教授とプリンストン大学のエルダー・シャフィール心理学教授が著書のなかで、ある実験結果を報告している。

ショッピングモールにいる人たちに対して、「あなたの車に不具合があって、300ドルの修理が必要になった。保険で半分だけカバーされるので、修理をするか、それとももう少し乗ってみるという賭けに出るか」という架空の問題を出した。そのあとに、今度は認知能力と実行能力をはかる調査をすると、富裕層も貧困層もその結果に大きな差は出なかった。

しかし、修理にかかる費用を300ドルから3000ドルに引き上げて同じ問題を出して、その後にまた認知能力と実行能力を調べると、貧困層の結果は大きく悪化した。

文=森永康平

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