マングローブを育てるインドの女性たち
インドの海岸沿いに位置するオリッサ州。そこで農業を生活の糧としてきた女性たちは、災いから新たな機会を生み出してきました。
サイクロンや海面上昇、水中の塩分濃度の上昇によって甚大な被害を受けた同州では、肥沃な土地が不毛の地と化し、女性たちは、収入源を失い、栄養不良から健康状態も悪化。社会から取り残されているという思いを強めるという苦しい状況に、長年立たされていました。
そういった状況も、ジェンダーの平等に焦点を当てた開発プログラムを通じて、彼女たちが置かれた状況は一変。シンプルかつ革新的な解決策にたどり着きました。イノベーションともいえる解決策のうちのふたつが、マングローブ育苗場と水上菜園です。
マングローブ育苗場は女性たちが運営しており、マングローブを育てて湿地林を再生させる仕事が収入源となっています。マングローブ林は激しい嵐による高潮の被害を防ぐ天然の堤防となり、沿岸地域の住民の生命や財産を保護する役目を果たします。
また、その周辺には多様な生態系が形成されるため、食糧や製品の原料が得られ、また水産養殖が行われる場にもなります。さらに、マングローブ林は二酸化炭素の大きな吸収源でもあり、気候変動の緩和においても重要な役割を担っています。
水中や土壌の塩分濃度の上昇には、水上菜園で対応しています。水上菜園は、乾燥させたホテイアオイなどの地元の素材に肥料と堆肥と沈泥を加えた苗床と竹で作った、小さな農園です。女性たちはそこで香辛料や野菜を栽培して、食料安全保障と収入源を確保しています。
こうした革新的な解決策が実現した背景には、男女同数の地元住民をメンバーとする委員会が、地元の開発実践者によって設置されたことがあります。女性も自分たちが直面する苦難を明確に伝える権限を得ることができ、問題の克服により関与しやすい立場に身を置くことができたのです。
このプログラムはベンガル語で「大きな変化」を意味する「パリバータン」と名づけられていましたが、対象地域での生活全体が劇的に好転する結果につながったことから、まさにこのプログラムにふさわしい名称だったといえるでしょう。